マツムシ鳴き声の真相!スズムシとの違いや都会の誤解を徹底解明
マツムシ鳴き声の真相!スズムシとの違いや都会の誤解を徹底解明の基本情報から最新動向までを一挙に解説しました。
マツムシが喉や口で鳴いていないことは広く知られていますが、左右の翅(はね)を擦り合わせる発音機構の構造美は、精密機械そのものです。
鳴くのは成虫のオスのみです。オスの前翅(ぜんし)を顕微鏡で観察すると、裏側に「摩擦脈(まさつみゃく)」と呼ばれる数十個の微小な突起が並んだヤスリ状のヤスリ脈が存在します。さらに、もう一方の翅の縁には爪のような「摩擦片(scraper)」が備わっています。オスが左右の翅を背中の上で約45度から80度の角度に高く持ち上げ、左右を高速で擦り合わせることでヤスリが弾かれ、翅の中央部にある薄い透明な膜「鏡膜(mirror)」がスピーカーの振動板の役割を果たして音を劇的に増幅します。
オスの鳴き声には、状況に応じて明確な3つのバリエーションが存在します。
- 単独鳴き(誘引鳴き):メスを遠くから引き寄せるための標準的な鳴き声。もっとも美しく規則正しい「チンチロリン」を一定の間隔で奏でる。
- 求愛鳴き:メスが視界または触角の届く範囲に接近した際、翅を低く伏せ気味にして発する弱々しく甘い断続音。メスを刺激して交尾を受け入れさせる役割を持つ。
- 威嚇・縄張り鳴き:別のオスがテリトリーに侵入してきた際、激しく翅を震わせて発する短く鋭い「チッ・チッ・チョン」という破裂音。
変温動物であるマツムシは、周囲の気温によって翅を動かす筋肉の収縮速度が変化します。熱帯夜に近い初秋には早回しのテープのようにハイテンポで鳴き、晩秋の冷え込む夜には間延びしたスローテンポの「チン……チロ……リン……」へと変化する点も、フィールド観察における風情あふれる見どころです。