札幌ジンギスカン「だるま」に連日行列が絶えない本当の理由

札幌ジンギスカン「だるま」に連日行列が絶えない本当の理由の全体像を詳しく解説してご紹介します。

「七転び八起きの精神を持って、いつ来ても変わらない味を守り続けています」——これは公式サイトに掲載されている、店主および従業員一同からの言葉だ。単なる謙辞ではなく、70年という時間軸の中に刻まれた経営哲学そのものと言っていい。

だるまが産声を上げた1954年(昭和29年)の札幌は、戦後復興の熱気の中にあった。ジンギスカンは当時すでに北海道の家庭料理として根付きつつあったが、それを「外食文化」として昇華させる試みは革新的だった。すすきのという歓楽街の特性を巧みに活かし、夜の街で働く人々、炭鉱や建設の現場から戻った労働者たち、そして週末の家族連れを次々と取り込んでいった。

「昔は本当に庶民の店だった」と語る60代の札幌市民の声をSNS上でも見かけるが、それこそがこの店の強さの根幹だ。高級化・ブランド化を急がず、「一人でも入れる、気取らない羊肉の聖地」というポジションを堅守してきた。バブル景気が弾けた1990年代も、インバウンド全盛の2010年代も、コロナ禍の試練を超えた2020年代も——メニューの骨格と価格設定の方向性は揺らがなかった。

食文化研究者の視点から見ると、「だるま」の70年は日本における「老舗ブランドの存続モデル」として極めて教科書的な軌跡を描いている。ハーバード・ビジネス・スクールが研究対象とするような「変えるべき部分と変えてはいけない部分を峻別する経営」——その実践例が、すすきののあの煙の中に息づいているのだ。

高橋 健太

高橋 健太

ライフスタイル編集者

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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