花王ロゴの月はなぜ向きを変えた?歴代の変遷と「怖い」噂の真相を追う
花王ロゴの月はなぜ向きを変えた?歴代の変遷と「怖い」噂の真相を追うに関する疑問や疑問点を初心者にも親しみやすくまとめました。詳細を読もうことができます。
花王のロゴを巡っては、ネット上で長年囁かれ続けているひとつの俗説が存在します。「花王の月マークは、米国の世界的トイレタリー大手P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)の模倣ではないのか」という疑惑です。
確かに、P&Gもかつては「13個の星と老人の顔が描かれた三日月」をシンボルマークとして長年使用していました。P&Gのマークは1850年代、ろうそくの出荷箱に付けられた星の印から始まり、1882年に意匠登録されています。時系列だけで見れば、花王石鹸が発売された1890年よりも前にP&Gの月マークが存在していたことは歴史的事実です。
しかし、取材と公的資料を照合すると、これを短絡的に「盗用」と断じるのは歴史的な実態を見誤っています。19世紀後半の西洋デザイン界において、月や太陽に顔を描く「天体の擬人化」は、石鹸に限らず時計、薬品、書籍の装丁などに広く用いられた国際的なグラフィックの共有モチーフ(共通言語)でした。長瀬富郎が海外の優れたデザインや高品質な舶来品を熱心に研究し、そのエッセンスを取り入れたことは間違いありませんが、花王は日本の特許局に対して正規の手続きを踏み、1890年に商標登録を完了させています。
皮肉なことに、元祖とも言えるP&Gは1980年代以降、「月のマークが悪魔崇拝のシンボルである」という荒唐無稽なデマ攻撃に晒され、莫大な裁判費用とイメージ被害に苦しんだ末、最終的に月のシンボルを段階的に廃止し、文字主体の「P&G」ロゴへと刷新しました。一方で花王は、デマに屈することなくデザインの角を取り、赤ん坊の笑顔へと昇華させながら現在まで月を守り抜きました。海外の共通モチーフから出発しながらも、真摯に消費者に寄り添い続けた結果、花王こそが「世界で最も成功した月のコーポレートマーク」を確立するに至ったのです。