なぜ咲く前に自家受粉?エンドウの花のつくりと驚きの仕組みを徹底解説
なぜ咲く前に自家受粉?エンドウの花のつくりと驚きの仕組みを徹底解説とはどんな影響があるのか? 詳しい意味を丁寧に紐解いて紹介します。
19世紀中頃、オーストリアの修道士グレゴール・メンデルは、約8年間にわたり数万株ものエンドウを栽培し、交配実験を繰り返すことで歴史的な「遺伝の規則性(優性の法則・分離の法則・独立の法則)」を導き出しました。
当時、多くの植物学者が遺伝実験に失敗していた中で、なぜメンデルだけが偉業を達成できたのか。その最大の理由は、実験材料としてエンドウを選んだ着眼点にありました。エンドウの花のつくりには、実験科学にとって理想的すぎる3つの特質が備わっていたのです。
1. 厳密な「自家受粉性」による純系の確保
前述の通り、エンドウは竜骨弁によって内部が密閉され、開花前につぼみの中で自家受粉します。野生状態でも自然交雑(他の株の花粉が混ざること)が起きる確率は1%未満と極めて低いため、何世代交配を重ねても親と同じ形質が現れ続ける「純系(じゅんけい)」を極めて容易に維持・管理できました。
2. 人為的な「人工授粉(交配)」のコントロールが容易
自然状態では自家受粉するエンドウですが、人間の手で交配させる操作も極めて容易でした。花が開く直前のつぼみをピンセットで開き、未熟なおしべをすべて摘み取ってしまいます(除雄=じょゆう)。これにより自家受粉を強制的に阻止し、そこに別の株から採取した花粉をめしべの柱頭につけることで、意図した親同士の掛け合わせを100%の精度でコントロールできました。
3. 見分けが明白な「対立形質」の存在
エンドウには、中途半端なグラデーションがなく、白黒はっきり区別できる対立形質がいくつも存在しました。メンデルは以下の7つの形質に着目してデータを集計しました。
- 種子の形:丸型(優性)/ しわ型(劣性)
- 子葉の色:黄色(優性)/ 緑色(劣性)
- 花の咲く位置:葉の付け根(優性)/ 茎の先端(劣性)
- 花の(花弁の)色:赤紫色(優性)/ 白色(劣性)
- さやの形:ふくれた膨満型(優性)/ くびれた狭窄型(劣性)
- 未熟なさやの色:緑色(優性)/ 黄色(劣性)
- 草丈:高い(約180cm・優性)/ 低い(約30cm・劣性)
栽培が比較的容易で、1年で世代交代が進み、1株から得られる種子の数が非常に多いという実用面も、統計的検証を重視したメンデルの実験を後押ししました。