愛知の料理はなぜ味が濃いのか?塩分神話の嘘と名古屋めしの真相
愛知の料理はなぜ味が濃いのか?塩分神話の嘘と名古屋めしの真相の具体的な内容に迫る! 専門的な視点でまとめました。
愛知の味付けの根幹を支えているのは、全国で主流を占める米味噌や麦味噌とは根本的に製法が異なる八丁味噌に代表される豆味噌、そしてたまり醤油の存在です。
一般的な米味噌は、蒸した大豆に米麹と塩を加えて数カ月発酵させます。米由来の上品な甘みが際立つ一方で、煮沸すると風味が飛びやすい性質を持っています。これに対し、愛知の伝統的な豆味噌は原料に大豆と食塩のみを用い、米麹を一切使いません。大豆そのものを麹菌で発酵させた味噌玉を木桶に仕込み、職人が手作業で重石を積み上げ、二夏二冬(2年以上)にわたって長期熟成させます。
この過酷な長期熟成の過程で、大豆タンパク質が徹底的にアミノ酸へ分解され、濃厚な旨味成分であるグルタミン酸が極限まで凝縮されます。同時にメイラード反応によってメラノイジンが大量生成され、あの独特の黒褐色と、深い渋み、独特の酸味が生まれます。
データを見れば明らかなように、豆味噌自体の塩分濃度(10〜12%)は、信州味噌などの米味噌辛口(11〜13%)と同等か、製品によってはむしろ控えめです。さらに、愛知の食文化ではムロアジの厚削り節などから引く濃厚な出汁を合わせるため、舌に乗ったときの旨味成分の総量(アミノ酸密度)が一般的な和食と比べて桁違いに高くなります。
つまり、旅行者が感じる「味が濃い」という感覚は、塩化ナトリウムの刺激ではなく、「圧倒的な旨味と渋みの重厚感」を脳が受容した結果生じる錯覚なのです。