虫の知らせの意味とは?不吉な予感が的中する科学の真相と三尸の虫
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「虫の知らせ(むしのしらせ)」とは、何の客観的な根拠もないのに、良くない出来事が起こりそうだと心で直感することを指す慣用句です。重要なポイントは、基本的に「不吉な事態」「災難」「不幸」など、ネガティブな予兆に対して使われる点です。宝くじが当たるような幸運の予感に対して「虫の知らせ」と表現するのは、本来の用法から外れます。
日本の古典文学や記録を遡ると、文献上の初出としては江戸時代の洒落本『真女意題』(1781年)に「氷川から来た子と名ざしよふしたも、大かた虫のしらせだろう」という記述が見られます。当時からすでに庶民の間で、理屈を超えた直感を「虫」の働きに例える文化が完全に定着していたことが窺えます。
では、なぜ「虫」が人間の感情や予感を知らせると考えられたのでしょうか。その直接のルーツは、古代中国の道教に伝わる三尸の虫(さんしのむし)という信仰にあります。
道教の教えでは、人の体内には生まれつき3匹の虫が棲み着いていると信じられてきました。これらは以下のように配置され、宿主の行動を常に監視しています。
- 上尸(じょうし):頭部に潜み、首から上の病気や欲望を司る。
- 中尸(ちゅうし):腹部(心臓・内臓)に潜み、食欲や怒りの感情を刺激する。
- 下尸(げし):足や腰に潜み、色欲を煽り精気を減退させる。
この三尸の虫は、60日に一度巡ってくる「庚申(こうしん)の日」の夜、人間が眠りにつくと体内から抜け出し、天の神(天帝)のもとへ昇ってその人間の犯した罪や悪事を告げ口するとされました。告げ口された罪の重さに応じて人間の寿命が削られるため、当時の人々は庚申の夜に一睡もせず念仏を唱えて過ごす「庚申待ち」という風習を行っていました。日光東照宮などで有名な「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿も、庚申信仰において悪事を見聞きせず口走らない祈りから派生したシンボルです。
かつての日本では、腹痛や感情の急変、説明のつかない不快感をすべて体内の「虫」の仕業と捉えていました。「虫の居所が悪い」「腹の虫がおさまらない」「虫唾(むしず)が走る」といった慣用句が現在も残っているように、体内で蠢く不可視の虫が、外から迫る危機を本人に察知させたという発想から「虫の知らせの語源」が誕生したのです。