トマトは野菜か果物か?米最高裁判決と農水省定義が示す衝撃の真相

トマトは野菜か果物か?米最高裁判決と農水省定義が示す衝撃の真相に関する基本知識をわかりやすくまとめました。要点を確実におさえることができます。

トマトの分類を巡って国家最高峰の司法が本気で激突した事件が、1893年にアメリカで起きた「ニックス対ヘッデン(Nix v. Hedden)」事件です。この裁判は、単なる知的好奇心のぶつかり合いではなく、巨額の関税徴収を巡る極めて生々しい経済的利害関係から引き起こされました。

1883年に制定された当時のアメリカ関税法(Tariff Act of 1883)では、国内の農業従事者を保護する目的から、輸入野菜に対して一律10%の輸入関税を課す一方、果物の輸入に関しては完全な無税(関税率0%)としていました。当時、西インド諸島などから大量のトマトをニューヨーク港へ輸入していた大手青果商ジョン・ニックス(John Nix)らは、港湾税関長エドワード・ヘッデン(Edward L. Hedden)によって徴収された10%の関税の不当性を主張。数千ドル規模の関税返還を求めて連邦裁判所に提訴したのです。

法廷では前代未聞の論争が繰り広げられました。原告側・被告側双方がオックスフォード英語辞典やウェブスター辞典などの権威ある辞書を法廷に持ち込み、証人を呼んでは「fruit(果実)」と「vegetable(野菜)」の定義を次々に朗読させるという、まさに言葉の定義をめぐる消耗戦が展開されました。

最終審となる合衆国最高裁判所において、ホレス・グレイ最高裁判事が下した判決は、法律界だけでなく食文化史に刻まれる歴史的一文となりました。

「植物学的に見れば、トマトはブドウやベリー類と同様にツル性植物の果実である。しかし、一般の人々の日常的な言葉遣いにおいて、トマトは野菜である。それはスープ、魚、肉料理とともに、あるいはその後に食卓に並ぶものであり、一般的に果物のようにデザートとして供されるものではない」

最高裁は、商取引法や関税法の解釈においては学術的な専門用語ではなく、「一般大衆が日常的にどのように認識し、消費しているか(コモン・センス)」を最優先すべきだと判断。法廷闘争は税関側の完全勝訴に終わり、トマトは法律上正式に「野菜」としての判例が確立されました。この判例は、法律の文言解釈において国民の社会通念を重視する重要な先例として、今なお米国の法科大学院で教え継がれています。

井上 凛

井上 凛

シニアコンテンツプロデューサー

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest