海岸の奇跡「龍涎香」の正体とは?億超え相場と真贋判定の全貌

海岸の奇跡「龍涎香」の正体とは?億超え相場と真贋判定の全貌についての真相をお届けします。

仮に本物の龍涎香を発見した場合、法的なトラブルに巻き込まれる懸念はないのでしょうか。インターネット上では「海岸の物は勝手に持ち帰ると窃盗になる」「海洋生物由来の物質だから密猟扱いではないか」といった憶測が飛び交っています。

結論から申し上げますと、日本の海岸で自ら発見した龍涎香を拾った場合の違法性は、原則として存在しません。法的には民法第239条第1項(無主物の帰属)が適用されます。

「所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する(無主物先占)。」海中を漂流し海岸に打ち上げられた龍涎香は、誰の所有権も及んでいない「無主の動産」です。したがって、拾得者が自分のものにする意思を持って拾い上げた瞬間に、正当な所有権が成立します。港湾施設内や私有地海岸への無断立ち入りなど別の法規に抵触しない限り、警察への遺失物届出も法的には不要であり、直ちに発見者の財産となります。

国際法上の観点もクリアされています。マッコウクジラ自体は絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES/ワシントン条約)の附属書Iに掲載されており、生体や肉、骨の商業取引は厳格に禁止されています。しかし、国連環境計画(UNEP)およびCITES事務局の見解において、自然に体外へ排出された龍涎香(アンバーグリス)は「排泄物(excreta)」および偶発的廃棄物として定義されており、条約の規制対象外と解釈されています。日本国内の法律である「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」においても、龍涎香の売買や所持は禁止されていません。

ただし、一点だけ留意すべきは国際間の移動です。アメリカ合衆国(海洋哺乳類保護法により厳格に所持禁止)やオーストラリアなど、一部の国では国内法によって龍涎香の輸入・所持が一切禁じられています。海外旅行先で拾って日本に持ち帰ろうとしたり、海外のバイヤーへ無許可で直接発送しようとすると、現地の法に抵触し没収や逮捕のリスクが生じます。

また、日本国内で換金に成功した場合は、税務上の申告が必須です。拾得した龍涎香の売却益は税法上の「一時所得」または「譲渡所得」に該当します。最高50万円の特別控除はあるものの、数百万円〜数千万円の買取額が生じた場合には、翌年の確定申告を怠れば重加算税や脱税容疑を招くことになります。「拾ったものだから非課税」という誤認は絶対に避けなければなりません。

中川 明日香

中川 明日香

ビジネス戦略アナリスト

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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