菊次郎の夏海外の反応と絶賛の真相|世界が涙した理由を徹底解剖
菊次郎の夏海外の反応と絶賛の真相|世界が涙した理由を徹底解剖の特集記事をご紹介します。役立つ情報が詰まっています。
現在でこそ世界中で絶賛を浴びる本作ですが、1999年の第52回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で初上映された際の反応は、決して手放しの礼賛ばかりではありませんでした。当時の菊次郎の夏カンヌ国際映画祭評価は、ある種の「困惑」からスタートしています。
1997年に『HANA-BI』でヴェネツィア国際映画祭の最高賞・金獅子賞を受賞し、欧米の映画界では「暴力と様式美を極めた孤高のフィルムメーカー」として神格化されていた北野武。国際的な映画批評家たちが期待していたのは、血生臭いヤクザ社会と突発的な死が交錯するハードボイルドな世界でした。ところが彼らの眼前に提示されたのは、中年男と小学生がのんびりとヒッチハイクを続け、河原で奇妙な大人たちとメンコやスイカ割りをして遊ぶという、極めてパーソナルでユーモラスなロードムービーだったのです。
当時の海外映画評では「巨匠の気まぐれなメロドラマ」「バイオレンスの不在」と辛口なコメントを残す批評家も一部存在しました。しかし、公式上映終了後の劇場では、公式の困惑を打ち破るように観客から10分間以上にも及ぶスタンディングオベーションが巻き起こりました。当時の特番インタビューや自著・手記において北野武監督自身が「暴力映画ばかり撮っていると思われるのが嫌で、誰もが予想しない方向にハンドルを切った」と語っていた通り、批評家の固定観念を裏切る試みは、時間とともに映画ファンの間で「北野武の最も純粋な人間愛が刻まれた傑作」として結実していきます。
とりわけ北野武映画海外の反応における転換点となったのが、中国市場をはじめとするアジア圏での熱烈な受容です。2020年の菊次郎の夏中国公開の反応はそれを象徴しており、都市部の若者たちがパンデミック禍の劇場の席を埋め尽くしました。過酷な学歴社会や急速な近代化に疲弊した中国の若年層にとって、何者でもない不器用な大人たちが少年のために無償で寄り添うあの河原の風景は、乾いた魂を潤す究極のユートピアとして受け止められたのです。