恵文社一乗寺店はなぜ本好きを魅了するのか?選書と雑貨の深層解剖
恵文社一乗寺店はなぜ本好きを魅了するのか?選書と雑貨の深層解剖についての真相をご紹介します。
恵文社一乗寺店が他の書店と決定的に一線を画しているのは、「棚そのものがひとつの雑誌のように編集されている」という点にあります。一般的な大型書店では、出版社別や日本十進分類法に基づいた整然としたジャンル分けが基本です。一方、同店では「旅」「料理」「デザイン」「手仕事」といった生活の情景を想起させるテーマに沿って、新刊・古書・リトルプレス(ZINE)がボーダレスに並びます。
この独自のキュレーション文化を牽引した象徴的な人物が、かつて店長を務めた堀部篤史氏(現・誠光社店主)です。堀部氏らが築き上げた「文脈で本を繋ぐ」という陳列手法は、読者が目当ての一冊を探すためではなく、「思いがけない未知の知性や感性と出会う(セレンディピティ)」ための空間を生み出しました。
出版不況が叫ばれる昨今においても、同店を訪れる読者の多くは「探している本があったから」ではなく、「今の自分に必要な何かを見つけるため」に足を運んでいます。アルゴリズムが弾き出す「おすすめ」では決して到達できない、人間の直観と美意識が介在した本棚の存在こそが、国境を越えて人々を引きつける最大の要因です。