原因不明の血尿や左側腹部痛の正体|ナッツクラッカー症候群の全貌
話題沸騰中の 原因不明の血尿や左側腹部痛の正体|ナッツクラッカー症候群の全貌について、詳しいまとめをご紹介しています。
医療現場において極めて厳格に区別されているのが、「ナッツクラッカー現象(Nutcracker Phenomenon)」と「ナッツクラッカー症候群(Nutcracker Syndrome)」の概念の違いです。
超音波エコーやCT検査を行うと、腹部大動脈と上腸間膜動脈の間で左腎静脈が圧迫されている画像所見自体は、健康な無症状の人でも一定の割合(数%〜十数%)で観察されます。このように「画像上の解剖学的狭窄はあるものの、血尿や疼痛などの自覚症状・臨床的異常を伴わない状態」をナッツクラッカー現象と呼びます。この段階では治療の対象にはならず、病気としての扱いも受けません。
一方で、その狭窄によって明らかな血尿、繰り返す左側腹部痛、起立性蛋白尿、重度の倦怠感といった「実際の臨床症状が発現している状態」になって初めてナッツクラッカー症候群と確定診断されます。
それでは、症状を自覚しながら「痛みが耐えられるレベルだから」と放置した場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。主な懸念点として以下の3つが挙げられます。
- 慢性的な貧血と鉄欠乏:肉眼的血尿が持続または頻回に発生することで徐々にヘモグロビンが低下し、動悸、息切れ、慢性疲労を引き起こす。
- 骨盤周囲の静脈うっ滞と副次疾患:左腎静脈から血液が逆流し、左性腺静脈(精巣静脈・卵巣静脈)へ過大な負荷がかかる。これにより男性では左側陰嚢内に静脈の瘤ができる精索静脈瘤(進行すると男性不妊の原因となる)、女性では骨盤深部の静脈が拡張して慢性的下腹部痛や性交痛、月経困難症を招く骨盤うっ滞症候群を併発する。
- まれな静脈血栓症リスク:極端な血流停滞が続くことで、狭窄部位より上流の左腎静脈内に血栓が形成されるリスクがわずかながら存在する。