軟式と硬式テニスの違いは?難易度や道具の差と転向の落とし穴を検証

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全国の中学校を見渡すと、硬式テニス部が存在する学校は私立を中心に一部にとどまり、公立中学校のテニス部といえば圧倒的多数が軟式テニス部です。公益財団法人全国中学校体育連盟(中体連)の加盟データを見ても、ソフトテニスは男子・女子ともに競技人口ランキングの上位常連です。なぜこれほどまでに日本の中学校では軟式テニスが支配的な地位を築いたのでしょうか。

その背景には、明治時代に遡る用具調達の経済的制約と日本のものづくり技術が関係しています。1878年(明治11年)、アメリカから日本に硬式テニス(当時のローンテニス)が紹介された際、日本にはフェルト付きの硬式ボールやガット張りの木製ラケットを製造する工業基盤がありませんでした。輸入品は極めて高価であり、当時の学生や学校が手軽に購入できる代物ではなかったのです。

そこで1890年(明治23年)、東京高等師範学校(現・筑波大学)の教員らが知恵を絞り、当時国内で急速に製造体制が整っていたゴム製品に着目。安価に大量生産できるゴム製中空ボールを考案したことが、ソフトテニスの誕生の瞬間でした。これにより、高価な道具を買えない全国の学校へ一気にテニスが普及する土壌が整いました。

さらに、中学校の設備事情がこの流れを決定づけました。学校の校庭は多目的に利用される「クレー(土)グラウンド」が基本です。硬式テニスのフェルトボールは土のグラウンドで使用すると、土埃を吸って真っ黒に変色し、水分を含んで重くなり、フェルトが摩耗して極端に寿命が縮まります。一方、ゴムボールである軟式球は、土の上で泥だらけになろうと水洗いして乾かせば何事もなく再利用できます。ボール単価の安さと耐久性、そして専門的なハードコートを必要としないメンテナンスの手軽さが、学校教育の現場と完璧に合致したのです。

前田 葵

前田 葵

サステナビリティ研究家

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。

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