お札の文字「隷書」とは?特徴や歴史・楷書との違いを徹底解明
お札の文字「隷書」とは?特徴や歴史・楷書との違いを徹底解明の真相や最新動向に迫る! 専門的な視点でまとめました。
隷書を視覚的に決定づけている最大の要素が「波磔(はたく)」です。波磔とは、横画の終割や右払いの部分で、筆を一度グッと沈めて圧力を加え、そこから右上または右水平方向へと鳥の尾(雁尾 / がんび)のように反り返らせて抜く筆法のことを指します。
書道の実技指導や臨書(古典を手本に学ぶこと)において基本となる波磔の書き方には、明確な3つのステップが存在します。
1. 逆入蔵鋒(ぎゃくにゅうぞうほう)による起筆:
筆の穂先を進行方向とは逆(右側)から斜めに入れ、穂先を線の中心に包み込むようにして隠します。これにより、線頭が角張らず、丸みを帯びた重厚な線が生まれます。
2. 緩やかな起伏(波勢)を描く送筆:
横画を引く際、定規で引いたような直線ではなく、中央部分でわずかに筆圧を弱めて細くし、終わりに近づくにつれて徐々に筆圧を強めていきます。
3. 頓筆(とんぴつ)からの抜きの動作(雁尾):
終点の手前でしっかりと筆を止め(沈め)、筆の弾力を利用しながら右斜め上へ滑らかに押し出すように払います。この時、急激に跳ね上げず、余韻を残すように引くのが美しい波磔の秘訣です。
書道界における絶対の鉄則として知られるのが「一字一波(いちじいっぱ)」の法則です。1つの文字の中に横画や右払いが複数ある場合でも、波磔をつける主画は必ず「1文字につき1箇所のみ」に限定します。他の横画は波磔をつけずに平らな線(直勒)にとどめることで、主画の波磔が一層引き立ち、画面全体の調和が保たれるのです。
この隷書の極致を学ぶための最高峰の手本とされているのが、後漢の中平2年(185年)に建立された『曹全碑(そうぜんひ)』です。多くの碑文が力強く男性的な「剛毅」を誇る中で、曹全碑は線が細やかでしなやか、伸びやかな波磔の美しさから「隷書芸術の最高傑作」と称されています。初心者が臨書を行う場合、筆の弾力を柔らかく使い、字形を無理に押しつぶさず、左右への伸びやかさを意識することが曹全碑攻略の第一歩となります。