勝率9割6分の最強力士・雷電為右衛門が横綱になれなかった歴史の真相

勝率9割6分の最強力士・雷電為右衛門が横綱になれなかった歴史の真相の要点を分かりやすくまとめてご紹介します。

雷電の伝説を語る上で欠かせないのが、「あまりにも強すぎて相手力士の命を脅かすため、相撲会所からいくつかの技を禁じ手として封印された」という有名なエピソードです。噂されている禁じ手は主に以下の三つ(四つ)です。

  • 張り手:雷電の張り手を喰らった力士は首の骨を痛めるか、土俵下まで吹っ飛んで昏倒したとされる。
  • 突っ張り(押し出し):巨岩のような体躯から繰り出される突進力で、対戦相手の内臓を傷めたとされる。
  • 閂(かんぬき):両腕で相手の両腕を外側から抱え込み締め上げる技。怪力のあまり、相手力士の腕の骨をへし折ってしまったとされる。

古文書や取組記録が暴く「伝説の真実」

では、この禁じ手伝説は本当だったのでしょうか。相撲博物館や同時代の古文書、雷電自身が書き残した旅日記『諸国相撲控帳(萬歩記)』などを検証すると、驚くべき事実が見えてきます。

結論から述べると、「相撲会所が雷電個人に対して公式に技を禁止した」という公的記録は存在しません。実際の幕内取組記録を見ても、雷電の決まり手には「突出」「押出」「寄切」などが普通に記録されており、押しや突っ張りを日常的に使用していたことが確認できます。

では、なぜこのような禁じ手伝説が全国に広まったのでしょうか。その背景には、江戸庶民が熱狂した「講談・芝居の脚色」と「雷電自身の武士道精神」が重なり合っています。

雷電は単なる力自慢の荒武者ではなく、雲州松江藩の士分に取り立てられた礼節を重んじる教養人でもありました。あまりに実力差がある相手に対し、怪力に任せて力任せの閂を極めれば、相手力士の選手生命を容易に絶ってしまうことは明白でした。そのため、自らの判断で「危険すぎる技を極力控えていた」「相手に怪我をさせないよう手加減しながら勝っていた」という事実が、後世の講釈師や戯作作家によって「お上から技を禁じられた無双の怪物」という極上の武勇伝へと仕立て上げられたのです。

池田 達也

池田 達也

マネー&キャリアエディター

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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