又吉直樹『火花』の結末と芥川賞の真相|名言とモデル芸人徹底解剖
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物語は、売れない若手お笑いコンビ「スパークス」のボケ担当・徳永が、熱海の花火大会の営業先で、先輩芸人「あほんだら」の神谷と出会う場面から幕を開けます。常識や迎合を激しく嫌い、純粋な笑いを追い求める天才肌の神谷に魅了された徳永は、「神谷の伝記を書く」ことを条件に弟子入りを志願します。
吉祥寺の居酒屋や下北沢の路地裏で夜な夜な酒を酌み交わし、笑いとは何か、表現とは何かを語り合う二人。しかし、月日の経過とともに現実は容赦なく二人を引き裂いていきます。徳永のスパークスは少しずつ深夜番組の露出や単独ライブの成功を掴みかけますが、時代の消費スピードと自らの表現欲求の狭間で迷走し、結成10年の節目で解散を決断。一方の神谷は、借金に追われ、自らの笑いを貫き通そうとするあまり社会から完全に孤立していきます。
物語のクライマックス、音信不通だった神谷と徳永が再会を果たすシーンは、多くの読者に鮮烈な衝撃を与えました。借金から逃亡していた神谷は、「世間を驚かせたい」「女性の体を手に入れれば面白い」という常軌を逸した衝動から、巨額の借金を重ねてFカップの豊胸手術を受けて現れたのです。
この異様な姿に徳永は激怒し、涙を流しながら神谷の愚行を叱責します。しかし、温泉旅館の露天風呂で神谷の無様な体を眺めながら、徳永はある根源的な気付きに至ります。どれほど世間から淘汰され、笑いの神様に見放されようとも、「生きている限り、バッドエンドはない。僕達はまだ途中だ」と。夢破れた表現者たちの挫折を、単なる敗北ではなく人間の尊厳として肯定する結末は、平成から令和を生きる多くの人々の胸を打ちました。