森博嗣の現在と隠遁の真相|驚きの印税事情から名作の読む順番まで
森博嗣の現在と隠遁の真相|驚きの印税事情から名作の読む順番までの要点を詳しく解説してご紹介します。
森博嗣という作家を語る上で欠かせないのが、工学研究者としての確固たるキャリアです。1957年愛知県生まれの彼は、名古屋大学工学部建築学科を卒業後、同大学院で工学博士号を取得。専門はコンクリートの破壊力学や材料工学であり、同大学の助教授として先端研究と論文執筆に明け暮れる日々を送っていました。
文壇を目指して下積みを重ねた旧来の作家とは、執筆動機からして一線を画しています。本人自ら公言している執筆のきっかけは、「大好きな模型(鉄道模型やRC飛行機)を買うための資金稼ぎ」でした。研究者としての給与だけでは、敷地を買い模型工房を作る夢を早期に実現するには足りない。そこで目をつけたのが、元手がかからず印税が見込める「エンターテインメント小説の執筆」でした。
ワープロに向かい、研究論文を執筆する合間の極めて限られた時間で書き上げられたのが、天才プログラマ・真賀田四季と犀川創平、西之園萌絵が織りなす密室劇『すべてがFになる』です。講談社に持ち込まれた同作は、編集部に凄まじい衝撃を与え、急遽創設された「第1回メフィスト賞」を受賞。1996年のデビューと同時に、ミステリ界の地図を一夜にして塗り替えました。感情論や文学的修辞に頼らず、ロジックと構造美で読者を圧倒する文体は、まさに第一線の構造工学研究者だからこそ生み出せた発明でした。