二兎を追う者は一兎をも得ずの真実|由来と現代マルチタスクの落とし穴
二兎を追う者は一兎をも得ずの真実|由来と現代マルチタスクの落とし穴の注目されている理由をコンパクトにまとめました。全体像を一目で把握できます。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉は、日本の古典文学や仏教説話が出典ではありません。その源流は、古代ローマ時代のラテン語格言「Duos insequens lepores, neutrum capit(2羽の野兎を追う者は、どちらも捕らえられない)」に遡ります。16世紀の人文学者デシデリウス・エラスムスが著した膨大な箴言集『アダジア(格言集)』(初版1500年)にも収録されており、ヨーロッパ全土で古くから共有されてきた狩猟訓でした。
英語圏においても、現在まで広く受け継がれています。代表的な英語表現としては次の2つが標準的です。
- "If you run after two hares, you will catch neither."(2羽の野兎を追いかければ、どちらも捕まえられない)
- "He who hunts two hares leaves one and loses the other."(2羽の野兎を狩る者は、片方を逃し、もう片方も失う)
この格言が日本に上陸したのは、明治初期の文明開化期とされています。当時、西洋の学問や文化を積極的に輸入するなかで、英語やフランス語の教科書・啓蒙書を翻訳する過程で「野兎(hare)」を日本の日常になじみ深い「兎(うさぎ)」と訳し、訓読調のリズムに乗せて定着しました。野原を俊敏にジグザグと走り回る野兎を同時に2羽捕獲することの物理的不可能性は、東西を問わず万人が直感的に納得できるリアリティを持っていたのです。