タールに構造式がない驚きの理由!成分と発がん性の真実をプロが解説
タールに構造式がない驚きの理由!成分と発がん性の真実をプロが解説の概要と注目ポイントをわかりやすく整理しました。
タールの中でも近代産業を支え、同時に化学物質研究の原点となったのが「コールタール」です。コールタールは、石炭を空気が遮断された炉の中で1,000℃以上の高温で蒸し焼きにする「乾留(かんりゅう)」の工程で副生します。鉄鋼業に不可欠な還元剤「コークス」を製造する際、炉から立ち上る揮発性ガスを冷却・凝縮させることで、液状のコールタールが分離回収されます。
コールタールそのものには構造式がありませんが、これを沸点の違いを利用して分留(分別蒸留)していくと、教科書でおなじみの明確な構造式を持つ純粋な芳香族化合物が次々と取り出せます。その代表例が以下の物質群です。
【ナフタレン(化学式:C₁₀H₈)】
2つのベンゼン環が横に縮合(共有)した構造を持ちます。かつて防虫剤の主原料として広く親しまれた特有の刺激臭を持つ白色結晶で、コールタールの最も代表的な結晶性留分の一つです。
【アントラセン(化学式:C₁₄H₁₀)】
3つのベンゼン環が一直線に直線状に縮合した構造式を持ちます。染料(アリザリンなど)の合成原料として重宝され、有機半導体研究の分野でも基礎物質として扱われます。
【フェナントレン(化学式:C₁₄H₁₀)】
アントラセンと同じ分子式(C₁₄H₁₀)を持つ構造異性体ですが、ベンゼン環3つが「くの字型」に折れ曲がって結合した構造を取ります。この角張った構造的特徴が、後述する強烈な発がん性物質の母核となります。
コールタールを蒸留し、軽油、中油、重油、アントラセン油といった有用留分をすべて留出させた後に釜の底に残る黒色の残渣を「タールピッチ」と呼びます。分子量の極めて大きい炭化水素が密集した物質であり、道路のアスファルト舗装の改質材や電極材の結合材として利用されています。