統合失調症とドーパミンの真実|幻覚や妄想が起きる理由と最新治療法

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1960年代、抗精神病薬がドーパミンD2受容体をブロックすることで幻覚や妄想を鎮静化させることが発見され、精神医学界に「ドーパミン仮説」が打ち立てられました。「統合失調症の原因はドーパミンの過剰である」という極めてシンプルなモデルは、当時の精神医療に劇的な変革をもたらしました。しかし、研究が進むにつれて単一の神経伝達物質だけでは説明のつかない矛盾が浮き彫りになります。

第一の矛盾は、従来のD2受容体遮断薬が幻覚や妄想などの陽性症状には劇的な効果を示す一方で、感情の平板化、意欲の減退、思考の貧困といった陰性症状や、記憶力・注意力・遂行機能が衰える認知機能障害に対してはほとんど改善効果を示さず、時に悪化させることでした。大塚製薬の医療情報ポータル『すまいるナビゲーター』や脳科学の学術データが示す通り、現在の医学では「部位によるドーパミンの不均衡」が証明されています。

具体的には、情動を司る中脳辺縁系ではドーパミンが過剰分泌されて陽性症状を招く一方、高次認知機能を担う前頭葉皮質(中脳皮質系)では逆にドーパミンの神経伝達が低下・枯渇しており、これが陰性症状を引き起こしています。すべてを一律に遮断してしまえば、前頭葉の機能低下はさらに進行してしまいます。

ここで鍵を握るのが、もう一つの主要な神経伝達物質である「セロトニン」との相互作用です。セロトニンは前頭葉などの特定領域においてドーパミンの過剰な放出を抑制するブレーキ役を果たしています。セロトニン5-HT2A受容体を阻害すると、ブレーキが解除され、前頭葉でのドーパミン放出が局所的に促されます。このメカニズムを応用し、「中脳辺縁系ではドーパミンを遮断して陽性症状を抑えつつ、前頭葉皮質ではセロトニンを阻害してドーパミンを補い陰性症状を改善する」という巧みなアプローチが開発されたのです。

渡辺 美咲

渡辺 美咲

ガジェット&アプライアンスライター

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。

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