番傘とは?蛇の目傘との決定的な違いや知られざる歴史の真相を徹底解説
番傘とは?蛇の目傘との決定的な違いや知られざる歴史の真相を徹底解説の基礎知識と応用に迫る! 専門的な視点でまとめました。
現代において、国産の番傘が制作されている産地は限られています。日本国内で流通する和傘用骨組み(エゴノキのろくろなど)の大部分を担い、和傘生産シェア日本一を誇るのが「岐阜和傘(岐阜県岐阜市加納地区)」です。岐阜和傘は国の重要無形民俗文化財および経済産業大臣指定伝統的工芸品にも選定されており、関西の「京都和傘(京和傘)」が茶道や社寺用の優美な別誂え品を極めたのに対し、岐阜は高度な分業体制によって実用性と品質を両立させた番傘文化の命綱となってきました。
一本の番傘が完成するまでには、実に100を超える手作業の工程が存在します。主な流れだけでも以下の緻密な職人技の連鎖によって成り立っています。
まず、傘の親骨と小骨を支える要部品「ろくろ」に、1本の真竹を均等に割って作った骨を1本ずつ絹糸で繋ぎ止めます(骨つなぎ)。竹の繊維方向を見極め、一本の竹からすべての骨を切り出すため、閉じたときに元の1本の竹筒のように寸分の狂いもなくピッタリと収まります。
続いて行われるのが、和傘の骨格に楮(こうぞ)を原料とした強靭な美濃手漉き和紙などをミリ単位の精度で貼り合わせる「張り」の工程です。傘を開閉させたときに和紙が綺麗に折り畳まれるよう、指先の感覚だけで絶妙な糊加減と張り具合を調整していきます。
そして、番傘に完全な雨具としての命を吹き込むのが「油引き(防水加工)」です。ここで使用されるのは、化学合成されたシリコーンコーティングなどではなく、古来伝わる「エゴマ油」や「桐油」といった植物性の乾性油です。
職人は刷毛を用い、手際よく和紙の表裏へと油を均一に塗り込みます。この油引きを終えた傘を、天気の良い日に天日へ晒してじっくりと乾燥させます。乾性油に含まれるリノレン酸などの不飽和脂肪酸が、太陽の紫外線と酸素によって化学反応(酸化重合)を起こし、和紙の繊維の奥深くに天然の強固な樹脂皮膜を形成します。この皮膜こそが、激しい風雨を弾き返す強靭な撥水性能を生み出すのです。油が酸化する過程で放つ独特の香ばしい匂いは、本物の番傘を手にした者だけが味わえる伝統の証でもあります。
最後に、傘の頭部(カッパ)に防水用の油紙や布をかぶせ、傘骨の先端を漆で固める「木固め」を経て、数ヶ月に及ぶ手仕事が結実します。