「故郷の空」歌詞全文と原曲の真相!歩行者用信号に選ばれた理由とは
「故郷の空」歌詞全文と原曲の真相!歩行者用信号に選ばれた理由とはの基本情報から最新動向までをわかりやすく整理しました。
日本人の琴線に触れる哀感あふれる旋律ですが、そのルーツは極東の島国ではなく、数千キロ離れたスコットランドの地にあります。原曲のタイトルは「Comin Thro' the Rye(ライ麦畑を通って)」。スコットランドの国民的詩人であり、後に『蛍の光』の原詩も手がけたロバート・バーンズ(1759〜1796年)が、古くから伝わる伝統的な民謡を採譜・改変して発表した作品です。
驚くべきは、日本の「夕空晴れて」という清純かつ厳粛な家族愛の詩と、原曲に込められたテーマの凄まじいギャップです。原曲は、秋風に父母を想うようなしんみりした歌では毛頭なく、「背の高いライ麦が生い茂る畑で、若い男女が人目を忍んで出会い、服を濡らしながらキスを交わす」という、極めてエロティックで瑞々しい若者たちの逢瀬を歌った民衆歌でした。
「Comin Thro' the Rye」の原詩骨子と日本語訳
スコットランド方言(スコッツ語)で書かれた原詩の代表的なフレーズは以下の通りです。
Gin a body meet a body / Comin thro' the rye,
Gin a body kiss a body, / Need a body cry?
(もし誰かがライ麦畑を通り抜けてくるとき、誰かとばったり出会ったら。
もしその誰かが相手にキスをしたとして、泣いて騒ぎ立てる必要なんてあるかしら?)
当時のスコットランド農村部において、背丈ほどに伸びたライ麦畑は、若者たちが大人たちの監視の目を逃れて逢瀬を楽しむ格好の密会場所でした。濡れた朝露でスカートの裾を湿らせながら帰ってくる娘の姿を茶化しつつ、「誰にも迷惑をかけていないのだから、野暮な噂話はしないで」と奔放に肯定する、生命力に満ちたフォークソングだったのです。
ドリフターズの替え歌「麦畑」が突いた意外な真実
昭和世代にとって忘れられないのが、バラエティ番組『8時だョ!全員集合』でザ・ドリフターズ(加藤茶、志村けんら)が歌って一世を風靡したコミックソング「ドリフの誰かさんと誰かさん」(作詞:なかにし礼、編曲:川口真)です。
「誰かさんと誰かさんが 麦畑〜 チュッチュ チュッチュ している いい気持ち〜」という強烈なフレーズは、当時のお茶の間を大爆笑の渦に巻き込み、子どもたちがこぞって真似をしました。学校教育の場では「厳粛な唱歌をふざけた替え歌に改悪した俗悪文化」としてPTAから眉をひそめられることも少なくありませんでした。
しかし、民俗音楽学の視点から検証すると、驚くべき歴史の皮肉が浮き彫りになります。大和田建樹が儒教的な親孝行の歌へと完全に換骨奪胎したのに対し、なかにし礼が作詞したドリフ版の「麦畑でチュッチュする」という歌詞は、奇しくも原曲「Comin Thro' the Rye」の元来の意味・シチュエーションを驚くほど正確に言い当てていたのです。土着の民俗的リアリティが、昭和のポップカルチャーを通じて無意識に先祖返りした極めて稀有な事例と言えます。