ピアノの鍵盤数はなぜ88鍵?白鍵・黒鍵の内訳と歴史に隠された衝撃の真相
ピアノの鍵盤数はなぜ88鍵?白鍵・黒鍵の内訳と歴史に隠された衝撃の真相に関するポイントを丁寧にまとめました。詳細な解説をチェックしましょう。
88鍵が世界標準となるなかで、明確な音響的意図をもってそれ以上の鍵盤数を備えた特別なピアノが存在します。オーストリアの名門ベーゼンドルファー(Bösendorfer)が誇るフラッグシップモデル「インペリアル(Model 290)」です。
このピアノには、標準の88鍵を大幅に上回る97鍵(完全8オクターブ)が搭載されています。最低音が通常の「ラ(A0)」からさらに下の「ド(C0)」まで拡張されています。
発端は20世紀初頭、作曲家・ピアニストのフェルッチョ・ブゾーニがバッハのオルガン曲(足鍵盤を多用する重低音楽曲)をピアノ用に編曲する際、オルガンの32フィート低音管に相当する音を鳴らすためにベーゼンドルファーへ特注したことでした。
しかし、97鍵が持つ最大の真価は「追加された最低音を直接弾くこと」だけではありません。その本質は「共鳴弦効果による圧倒的な音響の豊かさ」にあります。
ピアノは、ある鍵盤を弾いた際に他の張られた弦が共鳴(シンパセティック・レゾナンス)することで独特のふくよかな響きを生み出します。インペリアルは低音域に極太の弦が9本余分に張られているため、中高音部を演奏した際にも豊かな低音弦が豊潤に共鳴し、他のピアノでは絶対に再現できない重厚で温かみのある響きを鳴り響かせることができます。
なお、通常の白鍵と黒鍵の並びのまま拡張すると、ピアニストが視覚的に最低音の位置を見失ってしまうため、ベーゼンドルファーでは追加された低音部の白鍵を黒く反転塗装する、または開閉式の目隠しカバーを設置するという極めて合理的な配慮が施されています。