食べても太らない体質の真実|遺伝と腸内環境から解き明かす新常識
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「太りやすさは生まれつき決まっているのか」という問いに対し、近年のゲノム疫学研究は明快な回答を導き出しています。双子研究をはじめとする国際的な追跡調査によれば、太らない体質と遺伝の真相において、遺伝が関与する割合はおよそ30〜40%にとどまります。肥満関連遺伝子として知られる「FTO遺伝子」や、β3アドレナリン受容体遺伝子の変異を持つ人は基礎代謝が1日あたり約100〜200kcal低い傾向にありますが、残る60〜70%の領域は環境要因、とりわけ細胞活性と腸内環境によって左右されています。
後天的な差を生み出す第1の生体器官が、首の後ろや肩甲骨周辺、胸骨付近にわずかに存在する褐色脂肪細胞の活性化度合いです。白色脂肪細胞がエネルギーを中性脂肪として蓄え込む「貯蔵庫」であるのに対し、褐色脂肪細胞はミトコンドリア内に特異的なタンパク質「UCP1(脱共役タンパク質1)」を豊富に含み、エネルギーをひたすら「熱」として大気中に放散させる特殊なヒーター機能を持ちます。成人の褐色脂肪細胞活性には大きな個人差があり、活性が高い人は食事誘発性熱産生(DIT)が著しく高く、同じカロリーを摂取しても体が勝手に熱を発して消費してしまいます。
そして第2の主役が、腸内に生息するおよそ100兆個の細菌群集です。近年のメタゲノム解析によって、痩せ菌と腸内フローラの密接な連動が浮き彫りになりました。特に注目を集めているのが、腸壁の粘液層を好む「アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)」や特定のビフィズス菌種、酪酸産生菌です。これらの有用菌は、人間が消化できない食物繊維を発酵・分解して短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)を大量に生み出します。
短鎖脂肪酸は血流に乗って全身に運ばれ、交感神経系に存在する受容体(GPR41など)を刺激してエネルギー消費を促進すると同時に、脂肪細胞への過剰なエネルギー取り込みにブレーキをかけます。食べても太らない人の腸内には、この短鎖脂肪酸を生み出す工場が年中無休で稼働しているのです。