都はるみ「女の海峡」に秘めた魂の叫びと現在|昭和演歌の真髄
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1972年(昭和47年)6月10日に日本コロムビアからリリースされた「女の海峡」は、都はるみにとって通算56枚目のシングルにあたります。当時の日本は高度経済成長期の熱気の中にありながら、歌謡界では個人の孤独や哀歓を濃密に描く本格演歌が強い支持を集めていました。
本作を手掛けたのは、昭和演歌を代表する二大巨匠です。作詞を担当した石本美由起は、数々の名曲で港や海峡の別れを描いてきた情景描写の達人であり、作曲の猪俣公章は、哀愁を帯びたメロディラインの中にドラマチックな起伏を仕掛ける名手でした。当時の制作関係者の証言によると、猪俣氏は「都はるみという稀代のボーカリストが持つ、悲痛なまでの叫びと女の芯の強さを極限まで引き出す楽曲」を徹底的に追求したと伝えられています。
歌詞に描かれているのは、愛する人との別れを決意し、荒れ狂う北の海峡を渡る女性の心理描写です。単なる失恋の嘆きにとどまらず、引き裂かれるような未練を抱えながらも自らの足で運命を引き受けようとする覚悟が、「波のしぶき」や「海鳴り」といった過酷な自然描写とシンクロしています。石本氏の研ぎ澄まされた言葉と、猪俣氏の重厚な旋律が見事に融合したことで、聴き手の感情を鷲掴みにする名曲が完成しました。