アルゼンチンは何語?公用語の訛りや英語の通用度を徹底解説
アルゼンチンは何語?公用語の訛りや英語の通用度を徹底解説の背景について、最新情報を取りまとめてご紹介します。
アルゼンチンで話されるスペイン語は、標準的なスペイン(カスティーリャ地方)の語彙やメキシコなどのスペイン語とは明確に一線を画します。ラプラタ川流域(ブエノスアイレスや隣国ウルグアイ周辺)で話されるこの言葉は、専門用語で「リオプラテンセ・スペイン語(Español rioplatense)」と呼ばれます。
ブエノスアイレスに長期滞在した日本人ジャーナリストの手記や現地駐在員の証言によると、「大学で標準スペイン語を完璧に学んだつもりで現地に降り立ったら、まるで別の言語を聞いているようで最初は聞き取れなかった」という声が頻繁に聞かれます。その決定的な違いは主に3つの要素に集約されます。
1. イタリア語のような独特の抑揚と発音(シェイズモ)
アルゼンチンのスペイン語を耳にすると、まるでイタリア映画の登場人物が話しているかのような、リズミカルで歌うような抑揚(イントネーション)を感じます。これは19世紀後半から20世紀前半にかけて、全人口の半分近くに達する大量のイタリア系移民が流入した歴史的背景によるものです。現在のアルゼンチン国民の約60%以上がイタリア系のルーツを持つとされ、言語の響きそのものがイタリア語のナポリ方言やジェノバ方言に上書きされました。
また、発音における最大の特徴が「シェイズモ(Žeísmo / Šeísmo)」です。スペイン語の「ll」や「y」の音を、標準的な「ヤ・ユ・ヨ」ではなく「シャ・シュ・ショ(またはジャ・ジュ・ジョ)」と発音します。
- 「Yo me llamo...(私の名前は〜です)」:標準「ヨ・メ・ジャモ」 ➔ アルゼンチン「ショ・メ・シャモ」
- 「Calle(通り)」:標準「カジェ」 ➔ アルゼンチン「カシェ」
- 「Playa(ビーチ)」:標準「プラジャ」 ➔ アルゼンチン「プラシャ」
2. 二人称代名詞「vos」を使うボセオ(Voseo)の文法
通常のスペイン語教育では、親しい間柄の「あなた(君)」として「tú(トゥ)」を学びます。しかしアルゼンチンでは、日常会話からテレビ広告、大統領の演説に至るまで、ほぼ100%「vos(ボス)」が使われます。これを「ボセオ」と呼びます。
代名詞が変わるだけでなく、動詞の現在形の活用とアクセントの位置も変化します。例えば、「君はどう思う?」「君はどこから来たの?」と尋ねる場合、以下のような違いが生じます。
- 「君は話す」:標準「tú hablas(トゥ・アブラス)」 ➔ アルゼンチン「vos hablás(ボス・アブラス)」
- 「君は食べる」:標準「tú comes(トゥ・コメス)」 ➔ アルゼンチン「vos comés(ボス・コメス)」
- 「君は何を持っている?」:標準「¿Qué tienes tú?」 ➔ アルゼンチン「¿Qué tenés vos?(ケ・テネス・ボス?)」
3. 下町発祥のスラング「ルンファルド(Lunfardo)」の浸透
19世紀末、ブエノスアイレスの港湾地区(ラ・ボカ地区など)の下町で生まれたスラング群を「ルンファルド」と呼びます。元々は警察の取り締まりを逃れるために犯罪者や労働者階層の間で使われた隠語でしたが、タンゴの歌詞を通じて大衆化し、現在では若者言葉や日常会話に深く根付いています。
例えば、お金を「dinero」ではなく「guita(ギタ)」、仕事を「trabajo」ではなく「laburo(ラブーロ:イタリア語のlavoroが語源)」、少年や親しい仲間を「pibe(ピベ)」と呼ぶなど、辞書に載っていない独特の語彙が溢れています。