ひばりくんから現代アートへ!江口寿史の描線が放つ唯一無二の革新
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江口寿史の原点を語る上で欠かせないのが、熱気渦巻く1970年代末から80年代初頭の『週刊少年ジャンプ』の存在だ。プロ野球を舞台にしたナンセンスギャグの金字塔『すすめ!!パイレーツ』で頭角を現した彼は、緻密なパロディ感覚とスピード感あふれるコマ割りで瞬く間に読者の心を掴んだ。しかし、真の革命はその直後に訪れる。
1981年に連載を開始した『ストップ!! ひばりくん!』は、漫画史における不可逆のパラダイムシフトとなった。主人公の大空ひばりは、圧倒的な可憐さを誇る美少女でありながら、実は男の子という設定。当時としては極めて前衛的なジェンダー観を先取りしていただけでなく、特筆すべきはその圧倒的なファッション性と洗練された描線だった。
集英社の少年誌において、泥臭い熱血やスポ根が主流だった時代に、江口が持ち込んだのは東京のストリートスナップのようなリアルな衣服描写と、ポップミュージックの匂いだった。週刊少年ジャンプ編集部との激しい締切闘争や幾度もの休載劇すらも伝説化したが、そこまでして彼が追求したのは「手抜きのない完璧な1コマの美」にほかならない。美少女の横顔を描くために一切の妥協を排した姿勢が、後のコミック表現の解像度を根底から引き上げることになった。