なぜ刀を顔の横に?「八相の構え」驚きの由来と実戦の弱点を徹底検証
なぜ刀を顔の横に?「八相の構え」驚きの由来と実戦の弱点を徹底検証の基礎知識と応用に迫る! わかりやすい言葉で紐解きます。
八相の構えの歴史を紐解くと、そこには美的な演出ではなく、戦場の極限状態が生んだ物理的必然性が存在します。多くの古流剣術伝書や武具研究者の分析によると、この構えの原型は平安末期から戦国時代にかけての甲冑戦闘(介者剣法)で確立されました。
当時、武士が頭部に装着していた兜には、自身の武功を誇示するための巨大な「前立て(まえだて)」や「脇立て」、さらに首周りを防御する幅広の「錣(しころ)」が取り付けられていました。この重装備の状態で、現代剣道のように刀を真上に振り上げる「上段の構え」をとろうとすると、刀の鍔や柄が兜の装飾や側面に激突して自滅するという致命的な構造的欠陥が生じたのです。
そこで考案されたのが、刀身を側頭部の外側に逃がす八相の構えでした。鍔口を口元から耳の高さに置き、切先をやや後ろ上方へ傾けて立てることで、兜の装飾に一切干渉することなく、瞬時に斜め斬り(袈裟斬り)や横薙ぎへと移行できます。つまり、八相の構えの真相とは、重装甲冑の制約下で最大限の攻撃力を引き出すための「現場の知恵」だったのです。
また、「八相」という名称の由来には複数の意味が込められています。仏教用語の「八相成道(釈迦が生涯で見せた八つの相)」に由来するという説のほか、「天地・前後・左右の八方あらゆる変化に対応できる相」を意味するという解釈が有力です。流派によっては「木の構え」「金の構え」、あるいは体を半身にして刀身を隠すことから「陰の構え」とも呼ばれ、相手に対して手の内を読ませない心理戦の道具としても重宝されました。