シャンプー容器のギザギザの真相|花王の無償開放と識別の歴史
シャンプー容器のギザギザの真相|花王の無償開放と識別の歴史にまつわる興味深い視点を分かりやすく発信ます。
入浴中の浴室は、湯気や水しぶきによって視界が著しく遮られる特殊な環境です。コンタクトレンズや眼鏡を外して入浴する近視の人、視力が衰えた高齢者、そしてシャンプーの泡が目に入らないよう固く目を閉じているすべての人にとって、シャンプーとリンスのボトルを見分ける作業は日常的なストレスでした。
事態がさらに深刻だったのは、視覚に障害を持つ方々です。1980年代後半、花王の生活者研究部門に寄せられた「洗面所やお風呂場で、触っただけで中身がわかる容器を作ってほしい」という切実な声が、すべての始まりでした。当時、シャンプーとリンスは同じブランドであれば同一形状のボトルで販売されることが多く、晴眼者ですら文字を読まなければ判別が難しい状況だったのです。
開発陣は当初、点字の表記を検討しました。しかし、点字を日常的に読解できる視覚障害者は全体の約10〜15%に過ぎず、中途失明者や視力の落ちた高齢者には判読が困難であるという壁に直面します。そこで追求されたのが、「誰が触っても直感的に凹凸がわかり、かつ持ち上げるときに自然と指が触れる位置」への刻みの配置でした。試行錯誤の末、1991年、ポンプの頭部およびボトルの側面にギザギザ状の突起を設けるという画期的な手法が完成しました。