インフレとデフレはどっちがいい?給料と生活を守る経済の真実
インフレとデフレはどっちがいい?給料と生活を守る経済の真実について徹底解説いたします。専門家の見解をチェックしてください。
「物価が高くて買い物に行くだけでストレスがたまるインフレ」と、「給料が上がらずいつリストラされるか怯えるデフレ」。一般市民の目線から「どちらがマシか」と問われれば、誰もが「生活実感としてはどちらも等しく辛い」というのが偽らざる本音です。日銀の生活意識アンケートやSNS上の投稿を見ても、「物価高騰に給料が追いつかない現状なら、まだモノが安かったデフレ時代のほうが生活設計を立てやすかった」という悲鳴に似た意見が後を絶ちません。
しかし、国家経済の存続という巨視的な視点に立つと、明確な答えが存在します。近代経済学および各国の政策決定において、「制御不能な激しいインフレでない限り、適度で緩やかなインフレのほうがデフレよりも圧倒的に良い」というのが揺るぎない共通認識です。
なぜ個人がこれほど生活苦を感じているにもかかわらず、適度な物価上昇が不可欠とされるのでしょうか。その理由は、デフレが「経済の壊死(えし)」を引き起こす不可逆的な病であるのに対し、インフレは「成長の痛みを伴いながらも新陳代謝を促すエネルギー」になり得るからです。
モノの値段が下がり続ける社会では、人々は「明日になればもっと安くなる」と考え、消費や設備投資を先送りします。消費が滞れば企業の売上は減り、企業は人件費を削るために新規採用を止め、非正規雇用への置き換えや給与削減に走ります。所得が減った家計はさらに財布の紐を固く締め、モノがさらに売れなくなる――。この破滅的な縮小均衡に一度捕まると、自力で抜け出すことは極めて困難になります。
一方で、モノの値段が緩やかに上がる社会では、「価値が下がる現金を抱え込むよりも、必要な消費や将来のための投資に回そう」というインセンティブが働きます。適正な価格転嫁によって企業収益が潤い、それが賃上げとして労働者に還元されれば、購買力が高まってさらなる需要が生まれます。つまり、「実質賃金が伴う健全なインフレ」こそが、私たちが目指すべき唯一の正解であり、現在私たちが直面している苦境は、インフレそのものの罪というよりも「賃金の伸びが物価上昇のスピードに追いついていない過渡期の歪み」が生み出している現象なのです。