深刻化する熊被害に自衛隊は動けるか?法の壁と防衛省のリアル
深刻化する熊被害に自衛隊は動けるか?法の壁と防衛省のリアルとはどんな影響があるのか? 詳しい意味を丁寧に紐解いて紹介します。
歴史を振り返れば、軍隊が猛獣制圧に出動した前例がないわけではない。大正時代、北海道で起きた史上最悪の獣害「三毛別羆事件」では、大日本帝国陸軍の歩兵第28連隊が投入され、山狩りを支援した記録が残る。この史実は、現代の社会問題ドキュメンタリーでも度々引き合いに出される。
だが、当時の記録が示す教訓は「軍隊は野生動物の追跡に適していない」という冷厳な事実だ。大部隊の足音や軍靴の響きは警戒心の強い猛獣を遠ざけ、鬱蒼とした密林では集団戦術が通用しない。結果として巨大羆を仕留めたのは、軍の部隊ではなく、山を知り尽くした一人の老練なマタギだった。
陸上自衛隊の精鋭であっても、野生動物の行動生態に関する訓練を受けているわけではない。深い山林で気配を消し、風下から標的に忍び寄る技術は、軍事的なレンジャー技能とはまったく別種の職人芸だ。単に兵力を送り込めば解決するという発想は、軍事組織の能力に対する素朴な誤解に基づいている。