フェンタニルとは?致死量2Mgの衝撃とモルヒネの違い・日本流入の真実
フェンタニルとは?致死量2Mgの衝撃とモルヒネの違い・日本流入の真実について押さえておきたい ポイントを分かりやすい構成で解説いたします。
ネットやテレビ報道でフェンタニルが語られる際、必ずと言っていいほど付いて回るのが「ゾンビ」という不気味な言葉です。単なるセンセーショナリズムではなく、臨床医学的・中毒学的な見地からも、そのフェンタニル副作用と症状は人間としての尊厳を根底から破壊します。
オピオイド受容体が過剰に刺激されると、瞳孔が針の先のように小さくなる「縮瞳」、極度の傾眠、血圧低下が引き起こされます。さらに恐ろしいのが、胸壁や声門周辺の筋肉が硬直して一切の呼吸運動ができなくなる「木硬胸症候群(Wooden Chest Syndrome)」です。被害者は意識が遠のく中で窒息感を覚えながらも、筋肉がこわばって声を上げることも助けを呼ぶこともできず、数分でチアノーゼ(酸欠による皮膚の変色)を起こして絶命します。
そして今、事態をより凄惨にしているのがゾンビドラッグの真相です。密売市場では、フェンタニルの効果を持続させ利幅を増やす目的で、動物用非オピオイド鎮静薬「キシラジン(通称:トランク/Tranq)」を混入させる手口が日常化しています。このキシラジンが混ざることで、使用者は意識を保ったまま筋弛緩状態に陥り、立ったまま腰を直角に曲げて項垂れる独特の姿勢で固まります。さらにキシラジン特有の末梢血管収縮作用により、手足の皮膚組織が壊死し、骨が露出するほどの重篤な潰瘍(肉の腐敗)を引き起こします。街中をうつろな目で徘徊し、肉体が崩壊していく姿こそが、全米を震撼させている「生ける屍」の正体です。
こうしたオーバードーズ(過剰摂取)の現場で唯一の命綱となるのが、フェンタニル解毒剤ナロキソン(商品名:ナルカン等)です。ナロキソンはオピオイド受容体に先回りして結合し、フェンタニルを弾き飛ばす拮抗作用を持ちます。現在、米国の警察官や救急隊は点鼻スプレー式のナロキソンを常時携帯しています。しかし、フェンタニルの受容体結合力はあまりに強固であるため、通常のヘロイン中毒であれば1回の噴霧で蘇生するところ、フェンタニルでは3回から4回以上の連続投与が必要になるケースが頻発しています。加えて、キシラジンはオピオイドではないためナロキソンが一切効かず、現場の救命措置を極限まで難しくしています。