水メジャーの正体と水道民営化の罠|日本のインフラが狙われる真相

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日本の水道政策を論じる上で、決して見過ごしてはならないのが海外における水メジャーの失敗事例です。国際公共サービス労組研究所(PSIRU)の調査資料によると、2000年から2026年までの約20年間に、世界30カ国以上・300を超える自治体で民営化された水道が公営へと戻る「再公営化」が実行されました。

典型的な失敗の構図は、パリ市の事例に見ることができます。水メジャーの総本山とも言えるフランス・パリ市は、1985年にヴェオリアとスエズの両社に上水道運営を委託しました。しかし、委託期間中の25年間で水道料金は実質で約265%も急騰しました。さらに、配当金を優先した企業側が漏水防止工事を怠り、財務データがブラックボックス化して行政側のチェック機能が麻痺。これに激怒したパリ市民の世論を受け、当時のベルトラン・ドラノエ市長が決断し、2010年に市直営へと完全再公営化を果たしました。再公営化後、パリ市は料金の8%引き下げと黒字運営を実現しています。

さらに悲劇的なケースが、南米ボリビアで起きた「コチャバンバ水紛争」です。世界銀行の主導で水メジャー傘下の企業に水道が民営化された結果、料金は住民の月収の2割を超えるまでに暴騰。住民が庭に降る雨水をためて生活防衛を図ろうとしたところ、民間企業側は「雨水も当社の独占権物である」として雨水採取を禁止する事態に発展しました。大規模な暴動と治安部隊の武力衝突により死傷者を出し、最終的に契約は破棄されました。

先進国でも例外ではありません。イギリス最大の水道会社であるテムズ・ウォーターは、多額の債務を抱えて巨額の株主配当を払い続ける一方、下水未処理水の河川垂れ流し問題を恒常化させ、経営破綻の危機に瀕して公的管理が議論される事態に陥っています。

これらの事例から浮かび上がる水道民営化の危険性と水道民営化の再公営化理由は明確です。水という代替不可能な生存基盤において、「利益率の確保」と「公益性の確保」は構造的な利害相反(コンフリクト)を抱えているという点です。

高橋 健太

高橋 健太

ライフスタイル編集者

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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