無性に氷を食べたくなる原因とは?氷食症と鉄分不足の危険なサイン

無性に氷を食べたくなる原因とは?氷食症と鉄分不足の危険なサインの具体的な内容に迫る! わかりやすい言葉でまとめました。

氷を病的に食べ続けてしまう現象は、精神医学および内科学において「異食症(Pica)」の典型的な一類型である氷食症(Pagophagia)と定義されています。栄養価のない物質を1か月以上にわたって強迫的に摂取し続ける障害を指し、なかでも氷に対する異常な渇望は、日本を含む世界各国の臨床現場で古くから報告されてきました。

臨床データが明かすところによると、氷食症を訴える患者の圧倒的多数に共通して認められるのが「鉄欠乏性貧血」です。赤血球の主成分であるヘモグロビンは、全身の細胞や組織へ酸素を運ぶ極めて重要な役割を担っています。体内の鉄分が底をつくと、酸素運搬能力が著しく低下し、真っ先に打撃を受けるのが全身の司令塔である脳です。

ここで多くの人が「なぜ鉄分が足りないのに、鉄ではなく氷を欲するのか」という素朴な疑問を抱きます。近年の神経生理学的な研究では、主に2つの生体代償メカニズムが指摘されています。

第1に、体温調節中枢(視床下部)の失調です。鉄分はエネルギー産生酵素の必須構成要素であるため、鉄が不足すると視床下部の働きが乱れ、体温調節が正常に作動しなくなります。その結果、深部体温が異常に上昇したような錯覚や口腔内の異常な熱感が生じ、熱を冷まそうとする反射として氷を強く欲するようになります。

第2に、脳血流と覚醒レベルの低下に対する防衛本能です。貧血状態の脳は慢性的な酸素欠乏に喘いでおり、集中力の低下や強い疲労感に襲われています。氷の強烈な冷たさを口内に与え、側頭筋を激しく動かしてガリガリと噛み砕く刺激は、頸動脈から脳への局所血流を一気に押し上げ、低下した覚醒度を一時的に引き上げる効果をもたらします。つまり、疲れ果てた脳が覚醒を維持しようと、氷という強烈な刺激をドーパミン報酬系と結びつけて求めてしまう構造が存在するのです。

高橋 健太

高橋 健太

ライフスタイル編集者

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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