神経原性ショックの真相|血圧低下で徐脈の理由と脊髄ショックとの違い
神経原性ショックの真相|血圧低下で徐脈の理由と脊髄ショックとの違いに関する主要なデータを丁寧に解説いたします。
一般的に、大量出血や脱水などによって循環血液量が減少すると、生体は代償機構として交感神経を激しく興奮させます。末梢血管を収縮させて血圧を維持しようとし、心拍数を跳ね上げるため、患者は「冷たく蒼白な皮膚」と「頻脈」を呈します。しかし、神経原性ショックの病態生理はこの防衛システムそのものが中枢レベルで断絶される点に本質があります。
決定的な発症部位となるのが、第6胸椎(Th6)以上の高位脊髄損傷です。循環調節を司る心臓交感神経線維はTh1〜Th4(一部Th5)から分岐して心臓へ向かい、全身の血管を収縮させる交感神経遠心路も胸髄から腰髄にかけて走行しています。高位胸髄や頚髄に重大な損傷が加わると、延髄の血管運動中枢からの指令が遮断され、全身の血管抵抗を保っていた血管平滑筋の緊張(血管トーヌス)が一瞬にして消失します。
その結果、広範な血管拡張が引き起こされ、血管床の急拡大に伴って血液が末梢にプールされます。これが交感神経遮断による血圧低下の直接原因です。さらに、心臓を興奮させる交感神経が麻痺する一方で、第X脳神経である迷走神経(副交感神経)は延髄から直接心臓へ分布しているため、脊髄損傷の影響を受けずに正常に機能し続けます。ブレーキ役である迷走神経だけが無抵抗のまま心臓を支配するため、心拍数が異常に低下する徐脈が発生します。この「極端な血管拡張」と「心拍出量を補うべき頻脈の欠如」が重なり、生体は急速な循環不全へと突き落とされます。