男性脳・女性脳診断の嘘と真実!指の長さや思考テストを最新脳科学で検証
男性脳・女性脳診断の嘘と真実!指の長さや思考テストを最新脳科学で検証にまつわる役立つ知識を詳しく紐解きます。
インターネット上の科学コミュニティや学術ジャーナルで近年大きな潮流となっているのが、いわゆる男性脳女性脳嘘説です。従来のポピュラーサイエンス本が「男脳・女脳」の決定的な違いを煽り、大ヒットを記録してきた歴史に対する強烈なアンチテーゼといえます。
この議論に決定打を与えたのが、イスラエルのテルアビブ大学のダフナ・ジョエル(Daphna Joel)教授らが2015年に米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表した記念碑的な論文です。研究チームは、13歳から85歳までの1,400人以上の脳MRIスキャン画像を対象に、灰白質や白質の体積、神経接続パターンを詳細に解析しました。
その結果、特定の脳領域において男性に多く見られる特徴や女性に多く見られる特徴の統計的差異は存在するものの、「男性的な特徴だけを網羅した脳」あるいは「女性的な特徴だけを網羅した脳」を持つ個体は全体のわずか0%から8%に過ぎないことが突き止められました。圧倒的多数の人間は、男性的な特徴と女性的な特徴をパッチワークのように併せ持つ「モザイク脳」だったのです。
さらに、現代の神経科学で最も重視される概念が「神経可塑性(Neuroplasticity)」です。人間の脳配線は一度決まったら固定されるものではなく、日常の経験、職業生活、対人関係、学習環境によって生涯にわたって柔軟に再編され続けます。例えば、育児に主担当として深く関わる父親の脳内では、母親と同様にオキシトシン受容体が増加し、感情認識に関わる神経ネットワークが活性化することが近年の観察研究で証明されています。
英アストン大学のジーナ・リッポン(Gina Rippon)名誉教授は、著書『The Gendered Brain』の中で、脳の性差を固定的に捉えて個人の適性を制限する言説を「ニューロセクシズム(神経性差別)」と厳しく批判しました。脳そのものに先天的な性別ラベルが刻印されているわけではなく、社会的なジェンダー期待が個人の脳を後天的に形作っている側面を無視してはなりません。