やけどの水ぶくれ破れにキズパワーパッドは危険?Ng理由と正しい処置
やけどの水ぶくれ破れにキズパワーパッドは危険?Ng理由と正しい処置とはどのようなものなのか? 背景や要点を整理してお届けします。
家庭用ハイドロコロイド絆創膏のパイオニアであるキズパワーパッド(ジョンソン・エンド・ジョンソン)の外箱や添付文書には、はっきりと「にきび、湿疹、虫さされ、皮膚炎などの症状、及びそれらをかきむしったキズ、やけど、かさぶたができているキズには使用しないこと」(※医療機関で医師の指導のもと使用する場合等を除く)という旨の注意書きが記されています。メーカーがこれほど明確に使用を制限している背景には、やけどという外傷が持つ特殊な生理的メカニズムが存在します。
通常の転倒による擦り傷や包丁による切り傷であれば、受傷した瞬間に組織の損傷範囲はおおむね確定します。しかし、やけど(熱傷)は異なります。熱源が皮膚から離れた後も、余熱と炎症性サイトカインの連鎖反応によって、受傷後48時間から72時間にかけて組織の壊死が深部へと進行し続けるという特徴を持っています。一見すると浅い水ぶくれに見えても、翌日には真皮深層までダメージが達する「深在性2度熱傷」へ移行することが臨床上珍しくありません。
この不安定な皮膚状態の上からハイドロコロイド製剤で密閉してしまうと、次のような破滅的なトラブルが引き起こされます。
第一に、「過剰な浸出液による正常皮膚の浸軟(ふやけ)と表皮剥離」です。やけどの水ぶくれが破れた面からは、通常の擦り傷の数倍から十数倍もの浸出液(体液)が噴出します。家庭用のパッドではこの液量を吸収しきれず、わずか数時間で限界を迎えて液漏れを起こすか、周囲の健常な皮膚までドロドロにふやけさせ、結果として創面をさらに拡大させてしまいます。
第二に、極めて深刻なのが「嫌気性細菌の爆発的繁殖による化膿と組織破壊」です。やけどの創面には、熱で死滅したタンパク質や壊死組織が存在します。これらは細菌にとって格好の栄養源です。酸素を遮断する密閉空間を作り出すと、黄色ブドウ球菌や緑膿菌などの病原菌が急激に増殖し、創面を化膿させるだけでなく、周囲の皮下脂肪組織にまで感染が広がる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」を誘発します。治癒を早めるつもりの密閉が、皮肉にも皮膚の壊死を決定づけてしまうのです。