家族の金を盗んでも無罪?刑法244条「親族相盗例」の罠と真実
家族の金を盗んでも無罪?刑法244条「親族相盗例」の罠と真実の基礎知識と応用に迫る! 専門的な視点でご紹介しています。
家族の金品を勝手に持ち去る行為は、道義的・倫理的には紛れもない背信行為です。にもかかわらず、なぜ国家の刑罰権が及ばない事態が生じるのでしょうか。刑法第244条第1項には、次のような規定が置かれています。
「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で犯した罪(窃盗、不動産侵奪、またはこれらの未遂罪)は、その刑を免除する。」
ここで極めて重要なのは、「無罪」になるわけではないという法解釈上の違いです。法律上、窃盗罪や詐欺罪という犯罪の構成要件には該当し、違法性も責任も阻却されません。犯罪そのものは成立しているものの、政策的な判断によって「刑罰を科すことのみを免除する」という法的性質を持っています。専門用語ではこれを人的処罰阻却事由と呼びます。
この特例が存在する根拠は、近代法の基本原則である「法は家庭に入らず」という法理にあります。国家が家庭内の些細な財産争いにまで警察権力・司法権力を介入させると、かえって親族間の信頼関係修復を困難にし、家庭崩壊を決定づけてしまうという懸念から設けられました。家庭内部の財産秩序は、まず家族間の自治・道義的解決に委ねるべきだという歴史的配慮が、この特例の根底に流れています。