クマによる顔面外傷13症例の検討|命と顔を救う形成外科の治療と予後
話題沸騰中の クマによる顔面外傷13症例の検討|命と顔を救う形成外科の治療と予後について、多角的な視点を整理して公開しています。
クマ被害による救急搬送の症例検討において、救急医および形成外科医が直面する最大の壁は「気道狭窄のリスク」と「重篤な創部感染」のふたつです。顔面の著しい腫脹や口腔内・咽頭への出血、下顎骨骨折による舌根沈下は、搬送直後から急速な気道閉塞を引き起こすため、迅速な気管挿管や緊急気管切開の適応判断が生命の維持を決定づけます。
気道と循環動態の安定化に続いて行われる咬傷の初期処置では、感染制御へのアプローチが治療の成否を分けます。クマの口腔内には、パスツレラ属(Pasteurella multocida)やカプノサイトファーガ属、レンサ球菌、嫌気性菌など、極めて起炎性の高い多種多様な細菌叢が存在します。土壌菌の混入も相まって、受傷創を放置すれば数時間から半日で急速に蜂窩織炎や組織壊死が進行します。
そのため、クマ外傷の救急医療ガイドラインに準じた初期対応では、以下のステップが厳格に実行されます。
まず、高圧シリンジや生理食塩水を用いた最低数リットルにおよぶ徹底的な創部洗浄です。創縁に付着した泥や動物の体毛、遊離した微小骨片、失活した壊死組織を徹底的に切除する熊創傷のデブリードマンが不可欠となります。同時に、パスツレラや嫌気性菌を幅広くカバーするアンピシリン/スルバクタム(SAM/PC)などの広域βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系抗菌薬の点滴投与、および破傷風トキソイドや抗破傷風ヒト免疫グロブリンの投与が速やかに行われます。