愛宕念仏寺の1200羅漢の謎に迫る|嵐山奥深き祈りの名所徹底解説

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愛宕念仏寺を訪れた者が誰しも驚嘆するのが、境内の斜面を埋め尽くすように並ぶ「千二百羅漢」の規格外の個性です。伝統的な寺院に安置される羅漢像といえば、仏陀の弟子として厳格な表情を崩さず、端坐している姿が一般的です。しかし、ここの羅漢たちは異なります。満面の笑みを浮かべる者、お酒を酌み交わしている者、カメラを構えている者、テニスラケットを握る者、あるいは愛猫や愛犬を優しく抱きしめる者まで、実に人間味あふれるモチーフがそこかしこに点在しています。

この特異な光景が生まれた決定的な理由は、「彫り手がプロの仏師ではなく、全国から集まった一般の参拝者(素人)だった」という事実にあります。昭和56年(1981年)、本堂の大規模解体修理に合わせた仁王門の復興にあたり、公朝氏は「寺の再建を特定の富裕層の寄付だけに頼るのではなく、一人ひとりの参拝者が自らの手で祈りを込める場所にしたい」と考え、一般人を対象とした羅漢彫りの講習会を立ち上げました。

当初は五百体を目標としていたこのプロジェクトは、公朝氏の「うまく彫ろうとする必要はない。仏と向き合い、自分自身や大切な人を思って自由に彫りなさい」という指導方針が評判を呼び、全国から参加希望者が殺到。わずか10年後の平成3年(1991年)には、目標をはるかに超える1200体もの羅漢像が完成したのです。公朝氏自らが荒彫りした原石に、参加者たちがノミを入れ、それぞれの人生、祈り、歓喜、哀傷を刻み込みました。だからこそ、どの像も既成概念にとらわれない豊かな表情を持ち、見る者の心にダイレクトに語りかけてくるのです。

境内には千二百羅漢のほかにも、見逃せない重要な見どころが凝縮されています。

  • 本堂(重要文化財):鎌倉時代中期に再建された堂々たる木造建築。堂内には本尊である「厄除千手観世音菩薩」が鎮座し、鎌倉彫刻の気品ある佇まいを今に伝えています。
  • ふれ愛観音堂:目の不自由な方でも直接手で触れて仏の温もりを感じられるよう、公朝氏自らが制作した「ふれ愛観音」が安置されています。ツルツルに磨かれたそのお顔には、触れた人々の祈りが染み込んでいます。
  • 三宝の鐘:平和・仏・法・僧への感謝を込めて鳴らす3つの鐘。参拝者が自ら突くことができ、清澄な余韻が嵯峨野の山並みに吸い込まれていきます。
鈴木 陽菜

鈴木 陽菜

テックライター兼ウェブディレクター

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