生ビールと缶ビールの決定的な違いとは?「生」の正体と居酒屋の樽生が格別に美味い理由

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ビールのパッケージに輝く「生」の文字。多くの消費者は「酵母が生きている状態」や「生の果物のように足が早いこと」をイメージしがちですが、実態は全く異なります。 日本国内におけるビールの表示は、公正取引委員会および消費者庁から認定された「ビールの表示に関する公正競争規約」によって厳格に規定されています。同規約の第5条において、生ビール(ドラフトビール)の定義は極めて明快に定められています。 「熱処理(パストリゼーション)を行っていないビールでなければ、生ビール又はドラフトビールと表示してはならない」 つまり、加熱殺菌処理を施していないビールは、容器が樽であろうと、缶であろうと、瓶であろうと、すべて「生ビール」なのです。英語圏の「Draft beer」も元来は樽から注ぐビールを指していましたが、現在の日本市場においては「生ビール=ドラフトビール=非熱処理ビール」と同義語として扱われています。 かつて明治から昭和中期にかけてのビール造りでは、発酵を終えたビールの中に残存するビール酵母の活動を止めるため、約60度の温水を吹きかけるなどして熱処理(パストリゼーション)を行うことが不可欠でした。熱処理を行わなければ、出荷後も容器の中で酵母が発酵を続け、炭酸ガスが増えすぎて容器が破裂したり、濁りや香味の劣化が生じたりするためです。 転機となったのは、1960年代後半から実用化が進んだビール酵母のろ過技術(精密ろ過・マイクロフィルター技術)の開発でした。熱を加えることなく、ミクロン単位の超微細なセラミックフィルターやメンブレンフィルターを通すことで、酵母や雑菌を完全に物理除去する高度な技術が確立されたのです。これにより、熱による風味の劣化を防ぎ、できたてのみずみずしい麦の香りとフレッシュなキレをそのまま閉じ込めたビールが市場へ流通する基盤が完成しました。

中川 明日香

中川 明日香

ビジネス戦略アナリスト

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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