『殺戮にいたる病』結末の真相と叙述トリック徹底解説
『殺戮にいたる病』結末の真相と叙述トリック徹底解説を徹底追究! 知っておきたい トピックの裏側を分かりやすく展開します。
本作の核心となる最大の仕掛けは、「殺人鬼・蒲生稔の世代と立場を誤認させる叙述トリック」にあります。物語は主に以下の3つの視点が交互に切り替わる構成で進行します。
- 蒲生稔(がもう みのる)視点:異常な性衝動と妄執に駆られ、女性たちを次々と手にかけるシリアルキラー。
- 蒲生雅子(がもう まさこ)視点:自室に引きこもりがちで不審な行動を繰り返す「息子」の凶行を疑い、苦悩する母親。
- 樋口(ひぐち)視点:元刑事の探偵。過去の事件で娘を失ったトラウマを抱えながら、連続殺人犯を執念で追跡する。
読者は読み進めるにつれ、「蒲生雅子が疑っている息子=殺人鬼の蒲生稔」という等式を無意識に頭の中で組み立ててしまいます。息子の部屋から見つかる不穏な証拠品、夜な夜な外出を繰り返す様子、母親特有の庇護欲と恐怖がリアルに描かれるため、読者の疑心は完全に「大学生の息子・蒲生稔」へと固定されます。
しかし、最終局面で警察と樋口が踏み込み、現行犯逮捕された殺人鬼に向かって雅子が叫んだ言葉によって、事態は一変します。逮捕された蒲生稔は、雅子の息子ではなく「雅子の夫(40代後半の父親)」だったのです。雅子が密かに疑い、部屋を捜索していた引きこもりの息子の本名は「平四郎(へいしろう)」であり、稔はごく普通の会社員・家長として家族の中に潜んでいた真犯人でした。