安楽死の日本合法化はあり得るのか?スイスの実態と尊厳死の違いを解く
安楽死の日本合法化はあり得るのか?スイスの実態と尊厳死の違いを解くについて押さえておきたい 理由を厳選して解説いたします。
「なぜ日本国内では安楽死が法制化されないのか」という問いに対し、立ちはだかる最大の障壁が日本の法律における刑法上の扱いです。現行の日本法において、いかに患者本人の懇願があったとしても、医師が薬物を投与して死に至らしめれば刑法第202条の「嘱託殺人罪」あるいは「承諾殺人罪」に問われます。また、薬物を手渡して服薬を助ければ「自殺幇助罪」が成立します。
司法の現場では、過去の裁判例を通じて消極的安楽死の許容要件が模索されてきました。代表的な基準とされる1995年の東海大学安楽死事件判決では、積極的安楽死が免責されるための4要件(耐え難い肉体的苦痛、死期が切迫、苦痛除去の代替手段がない、患者本人の真摯な意思表示)が提示されました。しかし、これらはあくまで裁判上の理論的枠組みに過ぎず、実際に司法判断で積極的安楽死の適法性が認められた実例は日本国内に一件も存在しません。
こうした状況を打開すべく、政治や市民活動の現場でも動きが見られます。実業家の佐野秀光氏が代表を務める政治団体「支持政党なし」や「安楽死制度を考える会」などが制度導入に向けた世論喚起を行ってきたほか、終末期患者や支援者による法制化の請願も断続的に行われてきました。しかし、安楽死の最新ニュース動向を精査しても、厚生労働省や法務省が積極的安楽死の法制化に踏み切る兆候は見られません。
行政側が軸足を置いているのは、法制化ではなく医療ガイドラインの整備です。厚生労働省が定める「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づき、多職種の医療・介護従事者と家族が患者の意思を尊重しながら緩和ケアや延命治療の中止を協議する運用が現実的な落としどころとなっています。