船でしか行けぬ秘湯「大牧温泉」の真実!ドラマ聖地の現在と予約攻略
船でしか行けぬ秘湯「大牧温泉」の真実!ドラマ聖地の現在と予約攻略にまつわる役立つ知識を詳しく紐解きます。
大牧温泉が「船でしか行けない秘湯」と呼ばれる背景には、大正から昭和初期にかけて敢行された日本の近代化産業遺産を巡る壮絶な歴史が存在します。開湯は1183年、倶利伽羅峠の戦いに敗れた平家の落人が、白鷺が湯浴みをして傷を癒やしている姿を見て発見したと伝えられる由緒ある古湯です。かつてはこの山あいに農山村の集落と湯治場が広がり、谷沿いに細い山道が通じていました。
運命を一変させたのが、1930年(昭和5年)に竣工した小牧ダムの建設事業です。当時「東洋一のダム」と称された大事業に伴い、庄川の谷筋は一挙に堰き止められ、大牧温泉の旧集落や連絡道路はことごとくダム湖の底へと水没しました。村落全体が移転を余儀なくされるなか、湯元の関係者は源泉を引湯し、湖面から切り立った急峻な断崖中腹へと宿舎を新築・再建する道を選択したのです。
険しい岩盤が迫る地理的条件から、ダム完成後に新たな陸路を敷設することは土木技術的にもコスト的にも不可能と判断されました。結果として、資材の運搬から宿泊客の送迎に至るまで、すべての生命線を水上航路に委ねる唯一無二の環境が形成されたのです。現在、宿へ向かうには庄川峡の小牧ダム乗り場(小牧港)から運航されている庄川遊覧船の定期便を利用する以外に手段はありません。物理的に道路が遮断されているという事実は、現代のインフラ網においては極めて特異な奇跡といえます。