なぜ「フランス落とし」と呼ぶ?意外な由来の真相と動かない時の修理法

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建築金物のカタログを開くと、スガツネ工業(LAMP)やアトムリビテックといった名だたる建具金物メーカーの製品群の中に、堂々と「フランス落とし(French Bolt / Flush Bolt)」の名が並んでいます。その独特なネーミングの起源は、明治初期から大正時代にかけて日本に流入した西洋建築様式に遡ります。

当時、鹿鳴館をはじめとする洋館のテラスやサロンには、ガラスを格子状に嵌め込んだ優雅な両開きドア、いわゆる「フレンチドア(French Doors)」が数多く採用されました。この様式のドアは、左右両方の扉を開閉できる開放感が特徴ですが、普段は片方の扉(子扉・控え扉)を壁のように強固に固定しておかなければ、本錠のカンヌキをしっかり受けることができません。そこで扉の召し合わせ部分の木口(側面)や正面に彫り込み、上下にロッドを突出させて鴨居(上枠)と敷居(床面)に突き刺す金物が導入されました。日本の伝統的な引き戸で使われていた閂(かんぬき)の一種である「落とし猿(おとしざる)」と、フランス伝来の洋風建具機構が結びつき、建具職人たちの間で自然と「フランス落とし(仏落し)」と呼ばれるようになったのが定説です。

その基本的な仕組みは、極めて理にかなったリンク構造(テコ・クランク運動)に基づいています。扉の側面に露出している操作ツマミ(レバー)を上下にスライドさせると、内部のロッド(金属棒)が連動して垂直方向に押し出されます。下部は床面に埋設された「受け壺(ストライク・受座)」に、上部は枠側の受け穴にそれぞれ数センチメートル突き刺さることで、子扉が風圧や揺れでバタつくのを完全に抑え込みます。

現代の住宅においては、リビングの観音開きドアだけでなく、玄関サッシの親子ドアにおけるフランス落とし金具として標準装備されています。普段の出入りには親扉(幅の広い主扉)のみを使い、車椅子の出入りや大型家電・家具の搬入時には子扉のフランス落としを解除して全開にするという、日本の住宅事情に不可欠な可変空間を生み出す要石として機能し続けています。

鈴木 陽菜

鈴木 陽菜

テックライター兼ウェブディレクター

暮らしを豊かにする便利アイテムや時短アイデアを中心に、実用的な情報をお届けします。

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