大人同士の養子縁組が急増する理由とは?メリットと解消リスクの真相
大人同士の養子縁組が急増する理由とは?メリットと解消リスクの真相とはどのようなものなのか? 詳しい意味を整理してお届けします。
ネット上の言説やSNSの簡易解説では、「お互いが納得して書類を出せばすぐ家族になれるし、嫌になればいつでもやめられる」といった無責任な言説が散見されます。しかし、現場の司法実務において、これらは極めて危険な誤解と言わざるを得ません。知られざる3大盲点を論破します。
盲点1:「離婚と同じ感覚で別れられる」という致命的な錯覚
養子縁組の最大の法的リスクは、養子縁組の解消・離縁の難しさとリスクにあります。婚姻関係の解消(離婚)であれば、有責配偶者であっても破綻主義に基づき一定期間の別居等で裁判離婚が認められるケースが増えています。しかし、親子関係の解消である「離縁」に対する家庭裁判所の判断は極めて保守的です。
当事者双方が合意する「協議離縁」であれば届出1枚で済みます。しかし、一方が「親子のままでいたい」「生活の面倒を見ろ」「相続権を手放したくない」と離縁届への署名を拒否した場合、家庭裁判所の調停・裁判(裁判離縁)を経るしかありません。民法814条1項に定められた裁判離縁の要件は極めて限定的です。
- 他の一方から悪意で遺棄されたとき
- 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
- その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
実務上、パートナーとしての愛情の喪失や、単なる性格の不一致程度では「縁組を継続し難い重大な事由」とは容易に認定されません。実際に、関係が完全に破綻して別居しているにもかかわらず、相手が離縁を断固拒否し続けた結果、10年以上にわたって戸籍上の親子関係から抜け出せず、新たな人生を踏み出せないという泥沼の事例が家庭裁判所で頻発しています。
盲点2:「同性婚の法制化」が実現した瞬間に生じる法的不整合
将来的な法改正を見据えた際、同性パートナーの養子縁組には極めて重大な法的障壁が待ち構えています。日本の民法734条は「直系血族及び直系姻族の間では、婚姻をすることができない」と定めており、これは民法809条に基づく養子縁組によって生じた法定血族間にも適用されます。さらに民法736条により、離縁によって法定血族関係が終了した後であっても、かつて直系養親子関係にあった者同士の婚姻は生涯にわたって禁止されています。
すなわち、将来的に国政で同性婚姻が法制化されたとしても、過去に養子縁組を結んでしまった同性カップルは、一度離縁したとしても法律上の「婚姻」へ移行できない法的リスクを抱えているのです。この点を知らずに「当座の権利確保のため」と安易に養子縁組を選択してしまうと、将来の法的地位を不可逆的に狭める結果になりかねません。
盲点3:「実親との縁が切れる」という完全な思い込み
「養子に入ったのだから、もう実家の厄介事や親の介護には関わらなくて済む」と信じ込んでいる人が少なくありません。しかし、成人が行う普通養子縁組では、実親との親子関係および親族関係は一切消滅しません。実親に対する第1順位の相続権がそのまま残る代償として、実親に対する扶養義務(民法877条)もそのまま存続します。結果として、養子は「実の親」と「義理の親(養親)」という2組の親に対して同時に扶養・介護の法的責任を負うという、極めて過重な義務状態に身を置くことになります。