摩利支天とは何か?戦国武将が恐れ崇めた必勝神の正体と猪の謎
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摩利支天の正しい読み方は「まりしてん」。サンスクリット語の「マリーチ(Mārīcī)」を音写したもので、原義は「光線」や「陽炎」を指します。古代インド神話における夜明けの女神が仏教に取り入れられ、修行者や信徒を守護する「仏教の天部(神々)」の一尊となりました。
仏教の経典『仏説摩利支天経』には、摩利支天の特質が極めて印象的な言葉で刻まれています。「誰も見ることはできず、誰も知ることはできず、誰も捕らえることはできず、誰も縛ることはできず、誰も傷つけることはできず、誰も焼くことはできず、誰も害することはできない」。実体を持たず、太陽の光芒とともに揺らめく陽炎の化身だからこそ、何者にも干渉されないという絶対的な自由と不可侵性を備えているのです。
密教における尊容(神仏の姿)は多種多様ですが、多くは三面六臂(3つの顔と6本の腕)あるいは三面八臂の勇猛な姿で表されます。右手に金剛杵や弓矢、左手に無憂樹の枝や針と糸を持ち、自らの存在を隠す「隠形(おんぎょう)法」の本尊としても重用されました。この「敵から見えない状態で一方的に勝機を制する」という思想が、生死の極限で戦う武士たちの戦術思想と直結していきました。