10月からの朝ドラ徹底解剖!ばけばけキャスト相関図と抜擢の真相
10月からの朝ドラ徹底解剖!ばけばけキャスト相関図と抜擢の真相の見逃せないポイントをわかりやすく整理しました。
ドラマの深い味わいを支えているのが、モデル実在人物の経歴が持つ圧倒的なドラマ性です。ヒロインのモデルとなった小泉セツは、慶応4年(1868年)、松江藩の中級武士である小泉湊の娘として生を受けました。しかし、明治維新の廃藩置県によって武士階級は特権を喪失。一家は塗炭の苦しみを味わい、セツは生計を助けるために過酷な機織り仕事に明け暮れる日々を過ごします。一度は婿養子を迎えるものの夫の失踪によって破談となり、当時としては「出戻り」という重い世間の偏見に晒されることとなりました。
一方のラフカディオ・ハーン(パトリック・ラフカディオ・ハーン)は1850年、ギリシャのレフカダ島でアイルランド人の軍医の父とギリシャ人の母の間に生まれました。幼少期に両親が離婚し、親族の間をたらい回しにされる中で育ち、16歳の頃には遊戯中の事故で左目を失明。さらにアメリカ・シンシナティで新聞記者として身を立てるも、黒人女性との結婚が当時の人種隔離法に触れて排斥されるなど、常に「異邦人」「アウトサイダー」としての過酷な孤独を背負い続けた人物でした。
明治23年(1890年)、英語教師として松江に赴任したハーンの身の回りの世話をするため、セツが女中として通い始めたことが二人の出会いでした。当時のハーンは日本語がほとんど話せず、セツも英語は一言も理解できません。しかし、幼い頃に祖母や周囲から古来の言い伝えを聞いて育ったセツは、日本の昔話や幽霊・妖怪の伝説を身振り手振りと独自の平易な言葉でハーンに語り聞かせました。
セツが著した回想録『思い出の記』には、当時の二人の情景が生き生きと記されています。
「ヘルン(ハーン)は私の話を聞くとき、いつも身を乗り出して、まるでその妖怪が目の前に現れたかのように瞳を輝かせておりました。言葉が通じないことなど、怪異を語り合う間は少しも苦になりませんでした」
ハーンが遺した『怪談』『知られぬ日本の面影』といった名著の数々は、セツという類まれなる「語り部」であり「共同研究者」が存在しなければ、決して世に出ることはなかったのです。本作は、男性作家の「陰の功労者」として片付けられがちだった女性の主体性を、現代の視点から光を当て直す試みでもあります。