中国の偽ミッキー騒動の真相と現在|石景山遊園地から上海の激変を追う
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なぜ当時の中国では、このような露骨な偽物がまかり通っていたのでしょうか。その背景には、当時の中国社会に根強く存在していた「山寨(シャンジャイ)文化」と呼ばれる独自の社会心理と経済構造がありました。
山寨文化とは、もともと「官軍の手が及ばない山奥の砦(アジト)」を意味する言葉ですが、2000年代の中国においては「大手ブランドや権威を模倣し、低価格で庶民に提供する草の根のコピー商品文化」を指す言葉として定着しました。「海外の高価な本物を買えない庶民のために、似たような娯楽を提供するのが何が悪いのか」という開き直りにも似た大衆感情が、当時は一定の支持を集めていたのです。
しかし、現在において「中国は今でも偽キャラクター天国だ」と考えるのは明らかな誤解です。この20年間で中国の知財環境は180度の転換を遂げました。
大きな転換点となったのが、2016年6月の上海ディズニーランド(上海ディズニーリゾート)の開園です。総投資額約55億ドル(当時のレートで約6,000億円超)を投じた世界屈指の最新鋭パークが誕生したことで、中国国内の一般消費者の目が一気に「本物のクオリティ」へと向かいました。年間1,300万人以上を集客する上海ディズニーの大成功は、知的財産が莫大な富を生むことを中国社会に証明したのです。
さらに法制度面でも、中国政府は「専利法(特許法)」や「著作権法」「商標法」を相次いで改正。知財侵害に対する損害賠償額の上限を大幅に引き上げ、悪質な侵害に対しては実損害の最大5倍を科す「懲罰的損害賠償制度」を導入しました。現在では、中国の裁判所が海外企業の知財権を認めて多額の賠償を命じる判決が日常化しており、かつてのようなあからさまなパクリ遊園地が存続できる余地は完全に消滅しています。