織田信長が焦がれた九十九髪茄子の真相|数奇な運命と現在の価値
織田信長が焦がれた九十九髪茄子の真相|数奇な運命と現在の価値の全体像を分かりやすくまとめてご紹介します。
美術史や茶道史において別格の扱いを受けるこの名器は、一般に「つくもなす」、または「つくもがみなす」と読みます。古文書や記録によっては「付藻茄子」とも表記されますが、同一の器を指しています。中国の南宋から元時代にかけて作られたと推測される「唐物茶入」であり、全体が小ぶりで丸みを帯びた茄子の果実に似ていることから「茄子茶入」の分類に属します。
この独特な銘の由来には、王朝文学と中世の美意識が複雑に絡み合っています。広く定着している真相は、『伊勢物語』百三十九段に登場する次の和歌です。
「百年に 一年足らぬ つくも髪 我を恋ふらし 面影に見ゆ」
百(もも)から一を引くと「九十九」となり、白髪が生えた老女の髪を「つくも髪」と呼んだ故事に由来します。この器の釉薬(ゆうやく)に見られる、白く細かい斑紋やかすれが白髪の広がる風情を想起させたことから名付けられたと伝えられます。もう一つの伝承として、室町幕府三代将軍・足利義満、あるいは侘び茶の祖である村田珠光が当時の大金である「99貫」で購入した事実に由来するという説も併存しており、文学的風流と破格の金銭的価値が合わさった結果、この唯一無二の銘が定着しました。