高倉健のドラマが極端に少ない理由|名作あにきとチロルの挽歌の舞台裏

高倉健のドラマが極端に少ない理由|名作あにきとチロルの挽歌の舞台裏にまつわる役立つ知識を詳しく紐解きます。

『あにき』から15年後の1992年、高倉健は再びテレビドラマ史に刻まれる傑作を残します。NHK総合で放送された特集ドラマ『チロルの挽歌』です。作劇を手掛けたのは、日本を代表する脚本家・山田太一。高倉にとってはこれが生涯唯一のNHKドラマ主演となりました。

物語の舞台は、北海道の赤字ローカル線沿線に建設が進むオーストリア風テーマパーク「チロルワールド」。バブル経済の崩壊期を背景に、かつて妻を捨てて姿を消した中年技術者・立石(高倉健)が、テーマパーク再建の責任者として街に戻り、地元で暮らしていた元妻・志保(大原麗子)と再会することから物語は静かに動き出します。

山田太一が描いたのは、映画で見せる完全無欠のスーパーヒーローとしての健さんではなく、老いと挫折を抱え、過去の罪に苛まれる生身の男の弱さでした。大原麗子との息詰まるような視線の交錯、そして寒々とした北海道の風景の中で見せる深い沈黙は、テレビという枠組みを完全に凌駕する映像美を生み出しました。

さらに高倉は、1995年に放送されたNHK土曜ドラマ『刑事 蛇に横切られる』(原作:滝田芳吉、脚本:鎌田敏夫)にも主演。老刑事が執念と孤独の間で揺れ動く心理劇を見事に演じ切り、これが事実上の「テレビドラマ遺作」となりました。映画の遺作となった2012年の『あなたへ』(降旗康男監督)に至るまで、高倉健がテレビドラマというメディアに刻んだ足跡は、いずれも「盟友の脚本家が紡ぐ渾身の人間ドラマ」に限定されていたのです。

松本 悠斗

松本 悠斗

サステナビリティ研究家

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。

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